2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を機に、さらにバリアフリー法の改正が進みます。
2018年5月18日に参議院本会議で「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案 」が全会一致で可決成立しました。
2018年~2019年にかけて、内容によって順次施行されていきます。
東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人観光客が来日するのを受け、国内のホテルの車椅子使用者用の客室の増設義務ができます。
また、市町村単位でもバリアフリー対策であるマスタープランの作成が進みます。
国と国民の責務に「高齢者や障害者などに対する支援」も明記されました。
日本のバリアフリー化が進む改正になりそうです。
目次
国と国民の責務に「高齢者や障害者などに対する支援」が明記された
例えば、電車の中で高齢者や障害者がいた場合は声かけをすることなどが国民の責務として明記されました。
※明記しなくても人として当然のことですよね(^^)
共生社会の実現や社会的障壁の除去のための理念を明記したということです。
設備面のバリアフリー化だけでなく、心のバリアフリー化をしようということですね(^^)
ホテルや旅館での車椅子使用者用客室数の規定が変更
海外先進諸国に比べて、日本のホテルや旅館では車椅子使用者用の客室の数が少ないです。
従来のバリアフリー法では、床面積2000㎡以上で客室総数50室以上の宿泊施設に義務付けられていた車椅子使用者用の客室は1室以上でよかったものが、今回の法改正で「客室の1%以上」に変更されます。
例えば、従来は客室数500室のホテルでも車椅子使用者用の客室は1室でよかったものが、法改正後は500室×1%=5室以上必要になります。
車椅子使用者用の客室を新築するか、従来の部屋を車椅子使用者用の客室に改修することも可能です。
参考:国土交通省「オリパラを契機とした共生社会の実現に向け、バリアフリー化を促進」
市町村がバリアフリー化のためにマスタープランを作成
市町村単位でもバリアフリー化に向けた取り組みが始まります。
駅・道路・公共施設・宿泊施設・商業施設などが各々でバリアフリー化を行うのも大切なことですが、まずは市町村がバリアフリー化のマスタープランを作成し、各施設はそのマスタープランに従ってバリアフリー化をしていくということです。
2023年までに300市町村でマスタープランを作成する目標です。
東京など都市部の地下鉄駅の構内に多機能トイレを設置するスペースがない場合は、駅と隣接する建築物の内部への設置を促す制度もできます。
駅と隣接する建築物との共用部の連絡経路を含んだ多機能トイレの床面積を容積率に算入しない仕組みができる予定です。
また、延べ面積2000㎡以上で不特定多数の人が利用する特定建築物は、バリアフリー情報を提供する努力義務が新設されます。
官民が一体となってバリアフリーのまちづくりをしていく施策といえますね。
貸切バスや遊覧船などのバリアフリー基準適合の義務化
路線バスや客船に加え、貸切バスや遊覧船でもバリアフリー基準の適合が義務化されます。
また、道路や建築物でもバリアフリー情報の提供が努力義務化されます。
交通機関や建築物でのバリアフリー化が進みます。
バリアフリー化の進捗や状況は障害者に評価してもらう会議も開かれます。
参考:国土交通省『「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定~ 「行きたい」を「行ける」社会にするため、取組を強化します ~』
建築設計事務所はバリアフリー設計能力が必要になる?
今後もバリアフリー設計の需要が増えていくでしょう。
国をあげてバリアフリー化するという法改正ですから、建築物の設計にも大きく影響します。
建築設計事務所はバリアフリー設計の能力がより必要になるでしょう。
特に、大きな仕事ほどバリアフリー設計能力が必要になりそうです。
大型のホテルや旅館では車椅子使用者用の客室の増設が義務化されているためビジネスチャンスともいえるでしょう。
「ホテル・旅館のバリアフリー設計に強い設計事務所」というアピールをしておくことで大きな仕事がくる可能性があります。
まとめ
国をあげてバリアフリー化に取り組むことで、高齢者や障害者が暮らしやすい施設づくりやまちづくりが進みます。
建築物のバリアフリー化が大幅に進むきっかけにもなりますので、建築設計事務所はビジネスチャンスにもなるでしょう。
市町村がバリアフリー化のマスタープランを作成していく体制作りは2023年ころまで続くようです。
東京オリンピック・パラリンピック終了後もバリアフリー設計のニーズは多いままでしょう。
バリアフリー設計に強くなっておくことをおすすめします。