オリンピック開催都市の問題は、五輪後の競技を行った建物の使い道です。
オリンピック開催期間中はたくさんの人が訪れる競技施設も、オリンピック終了後には用途がない負の遺産になってしまうことが多いです。
ですが、解体するにも「オリンピックの記念だから」となかなか解体しない都市もあります。
2012年のロンドンオリンピックと2016年のリオオリンピックでは、オリンピック競技施設を一時的な建物ととらえて、容易に解体できて、解体資材を別の建造物の部材に再利用しています。
オリンピック終了後に使い道のない負の遺産にならないようにするためです。
まさに「トランスフォーマー」のような建築物だったのです。
2020年の東京オリンピックでも、ロンドンオリンピックやリオオリンピックのようなトランスフォーマー建築を採用しているのか、注目です。
それでは、さっそく見ていきましょう(^^)
オリンピック開催都市のその後
過去にオリンピックが開催された都市では「五輪の遺産」として、体育館やスタジアムが遺されています。
1998年に冬季オリンピックが行われた長野では、現在でもオリンピックに使われた競技場が遺されています。
- ビッグハット
- エムウェーブ
- ホワイトリング
- アクアウイング
は現在も残っていますが、使用頻度はあまり多くありません。
まつりの会場、地域のイベント、大会会場、コンサート会場、習い事などに使われていますが、スケジュールがびっしりというわけではありません。
引用元:youtube「空撮 長野 Mウェーブ」
2004年のアテネオリンピックで使われた競技場の多くも、現在はあまり活用されていません。
2008年の北京オリンピックで使われた北京国家体育場は、ときどきサッカーの試合が行われる程度で、あまり活用されていません。
オリンピック後もその姿を残していますが、会場が広すぎたりして使いにくい施設になっている問題もあります。
実は、過去にオリンピックを開催した多くの都市が、オリンピック時の建築物を今でも抱えながら有効活用できていない現実があります。
国際オリンピック委員会(IOC)も開催都市に対して「オリンピックに使った施設は、オリンピック閉幕後の使い道についても考慮するように」と提唱しています。
オリンピック開催都市に選ばれると気合を入れて競技場を建設する国が多いですが、閉幕後に施設を再利用する「トランスフォーマー建築」が注目されています。
ロンドンオリンピックのトランスフォーマー建築
IOCが「五輪終了後の施設の再利用」を提唱したことをうけて、2012年のロンドンオリンピックからトランスフォーマー建築が実施されています。
ロンドンオリンピックでは解体しやすい工法で競技施設が建設されました。
近年のオリンピック建築で注目されているのが「プレハブ工法」です。
数十年前から存在する工法ですが、プレハブ工法の技術もここ数十年で大きく進歩しています。
以前よりも、耐久性があり、より軽く、施工期間も短いプレハブ技術が確立されています。
現代のプレハブ工法は技術と素材の進歩により、新規で建物を建てるのに比べると50~80%のコストカットが可能です。
オリンピックとパラリンピックの開会から終了までの期間は、たった1ヶ月半しかありません。
たった1ヶ月半のために巨額の費用と時間をかけるよりも、最新のプレハブ工法を利用して建設を行い、オリンピック終了後は部材や土地を再利用できるトランスフォーマー建築の方がハイブリッドで効率的ですね。
リオオリンピックの競技場建築
リオオリンピック開催前のブラジルは財政難の状態が続いており、当時は「本当にオリンピックを開催できるのか?」と不安視されていましたよね。
実は、リオオリンピックの競技施設の多くがFIFAワールドカップやパンアメリカン競技大会(4年に一度行われる南北アメリカ大陸の競技大会)のために造られた既存の建物です。
財政難ということもあり既存の施設を再利用したのは、今となっては正しい判断でした。
コストカットしたオリンピックをすることでも、経済的な利益は大きいです。
また、リオオリンピックでもプレハブ工法は活用されています。
リオ五輪の競技施設は、コンクリート盤、鋼板、柱や梁、床などの資材がパズル形式に組み合わせれています。
オリンピック終了後は建物は解体されて、資材や土地が他の用途に再利用されます。
例えば、
- バハオリンピックパークは公園になる部分と、民間企業の開発
- 国際放送センターは高校の寮に再利用
- オリンピックアクアティックスタジアムは解体されて水泳場に再利用
- フューチャーアリーナは解体されて小学校を造る資材に再利用
など、競技施設はオリンピック終了後に別の用途に変更されています。
2020年東京オリンピックでもプレハブ工法が活用される
実は、東京オリンピックの建設にもプレハブ工法が活用されています。
例えば、カヌー競技の会場や競泳競技施設の基礎部分はプレハブ式で建設されています。
また、新国立競技場はオリンピック終了後に球技専用の競技場に改修されます。
陸上トラックをなくし、客席を広くするようです。
もし、東京オリンピックの競技施設にプレハブ工法を使わなければ、
- 建設費が膨大になる
- 建設人材が足りない
- オリンピック終了後の維持費が財政を圧迫する
ということがわかりきっています。
オリンピック後に巨額の赤字をかかえてしまっては本末転倒です。
日本のプレハブ技術は世界トップクラスです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの競技施設をプレハブ建築にすることで、日本のプレハブ技術を世界にアピールするビジネスチャンスでもあるのです。
オリンピック後は土地と部材の再利用も検討されているため、東京オリンピックでもトランスフォーマー建築になるでしょう。
まとめ
リオオリンピックやロンドンオリンピックのトランスフォーマー建築は、今後のオリンピック建設のスタンダードになるかもしれません。
オリンピック終了後に不要な建築物が残らないようにするのも大切です。
プレハブ工法の活用や、オリンピック終了後の土地や部材の再利用がこれからのオリンピック開催都市のありかたなのかもしれません。
また、プレハブ技術が進歩すれば、さらにコストが安くて、工期が短くて、耐久性の高い建築が可能になります。
建設のあらゆるコストカットとハイクオリティー化は永遠のテーマですので、オリンピックに限らず建設技術として活用できるでしょう。
オリンピックは建設技術を競う大会ではなく、スポーツの祭典です。
競技施設がどのような工法であろうと、感動は変わらないでしょうね(^^)
ちなみに、2020年の東京五輪後の建設業界を、
東京オリンピック後の建設業界の動向にまとめたので、参考に読んでみてください(^^)