最新の建築技術と言えば、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)が主流です。
ですが、高層建築の手法に木造が注目されています。
「木造で高層ビルが建つの?」と疑問に思いますよね。
ですが、木造建築の方が長く保つのは、奈良の法隆寺など日本の木造建築物を見れば明らかです。
「木造で高層ビルは建つのか?」を見ていきましょう(^^)
新しい木造建築
世界TOP10の高さを誇る超高層ビルは、どれもコンクリートで建てられています。
※世界TOP10の超高層ビルは「世界の超高層ビルTOP10ランキング!」にまとめています(^^)
ですが、コンクリート造にはデメリットがあります。
- 自重を支える強度が必要
- 費用が高い
- 熱伝導率が高いため、断熱や湿気の対策が必要
などがコンクリート造のデメリットです。
※もちろん、火事や地震に強いというメリットもあります。
ですが、高層ビルの新たな工法として木造が注目されています。
しかし、この構想は従来の木造建築をそのまま使うわけではありません。
「新しい木造」が考えられています。
アメリカシカゴでは、「リヴァー・ビーチ・タワー」という80階建ての高層ビルを、ブナ材で造る計画が進んでいます。
ちなみに、現在の木造建築の最高階数はカナダのバンクーバーにある18階建て学生寮「ブロック・コモンズ」です。
引用元:youtube『高層木造建築「ブロックコモンズ」- 工事 早送り動画(タイムラプス)』
コンクリートも使われていますが、木製モジュールを積み重ねるように造られています。
木材でも18階もの建築物を造れる証明と言えるでしょう。
シカゴのリヴァー・ビーチ・タワーの計画は、「クロス・ラミネーティッド・ティンバー」というとても強度の高い合板の仕様が検討されています。
異なる木の板や角材を貼りあわせることで非常に高い強度を発揮し、鋼鉄に匹敵する強度の複合材料として期待されています。
つまり、従来の木造建築をそのまま使うのではなく、新しい木造の材料を採用しようとしているわけです。
木造が高層ビルに向く理由
高層ビルを設計するときにもっとも重要なのは「自重を支えなければならない」ということです。
軽くて強度の強い木材は、高層ビル建築に向くと言えます。
強度の問題がクリアになれば、木造で高層ビルを建てられる可能性は飛躍的に上がります。
住友林業の木造高層ビル計画
ちなみに、住友林業が高さ350m、地上70階建ての木造高層ビル建築を計画しているようです。
なんと、材料の9割は木材という計画だそうです。
まだ本格的な計画というわけではなさそうですが、2041年完成?という情報もあります。
※住友林業は2041年に350周年を迎えるため、地上350mのビルということのようです。
木造ですから、
- 調湿効果
- 消臭効果
- CO2削減効果
があります。
住友林業の木造高層ビルが完成すれば、現在日本一の高さを誇る大阪の「あべのハルカス(300m)」を超える高さになります。
住友林業の木造高層ビルにしても、シカゴの「リヴァー・ビーチ・タワー」にしても、「理論上は可能」という段階のため、これから実際に建てるにあたっての問題点を洗い出すという段階のようです。
木造建築の耐久性はすごい!
木造建築最大の強みは耐久性です。
日本は木造建築が多い国ですが、築年数が100年を超える建築物が多く残っており、現在も使われています。
最近はやりの「古民家」ですが、築100年を超えるものは日本中にたくさんあります。
「古民家再生」という言葉もあるくらいで、古民家をさらに向こう100年使えるようにリフォームする家も多いです。
日本の木造建築の最高峰は、なんと言っても奈良の法隆寺でしょう。
創建は607年ですから、築1400年以上です。
もちろん、過去になんども補修工事をしていますが、木造建築は1400年以上保つことができるという証拠です。
ちなみに、コンクリート造の耐久年数は約100年と言われていますので、木造には到底勝てません。
木造の高層ビルを建てることができれば、機能性と耐久性においてコンクリート造の高層ビルを上回る可能性がありますね。
木造建築は地震に強い?
古い木造建築は現在の耐震基準を満たしていないと言われています。
ですが、日本の古民家は長い歴史の中で先人の知恵が活用されていると言って良いでしょう。
日本が地震大国であることは今に始まったことではありません。
日本は昔から地震大国であり、昔からの日本の建築技術にはちゃんと「地震対策」がされているのです。
古民家に見られる構造は「耐震構造」ではなく「免震構造」です。
「耐震」とは文字通り、地震に耐える造りです。
地震のエネルギーに耐えられる力で建っていれば、地震で倒壊しないという意味です。
ですが、耐震構造のデメリットは「想定よりも大きな地震が来たら負けてしまう」ということです。
現在の耐震機能は年々向上しているため大きな地震にも耐えられるように造られていますが、どこまで大きい地震を想定しているかがポイントです。
免震構造とは「地震エネルギーを受け流す構造」です。
古民家の多くは、石の土台の上に家が乗っかっているだけです。
つまり、地面と家が固定されていないのです。
大きな地震がきても、地面と家が固定されていないため地震エネルギーを受け流すことができます。
また、古民家は梁や柱などの接合部にあえて遊びを設けているものもあり、地震の揺れを受け流す構造がとられています。
つまり、一概に「木造は地震に弱い」とは言えないのです。
日本の古くからの免震構造を活かすことで、地震にも強い木造高層ビルができるかもしれませんね。
まとめ
木造の高層ビル建築は、現段階では「理論上は可能である」という段階です。
現実的に木造で高層ビルを建てることができれば、建築工法の大きな一歩になるでしょう。
また、バンクーバーの「ブロック・コモンズ」のように『木造とコンクリートの良いとこどり』という考え方も重要です。
木とコンクリートのデメリットを補い合うことができれば、もっとも良い建築物になりえるでしょう。
今後の木造高層ビル建築が楽しみですね(^^)
ちなみに、日本国内の高層ビルTOP10を、
日本の高層ビルTOP10ランキングにまとめているので、読んでみてください(^^)