2016年にスイスで世界最長距離の鉄道トンネル「ゴッタルドベーストンネル」が完成しました。
トンネルの長さは57.1kmで、日本の青函トンネルの53.85kmを抜いて世界一の長さのトンネルになりました。
ゴッタルドベーストンネルとは?
ゴッタルドベーストンネルは、スイスのウーリ州のエルストフェルトとティチーノ州のボーディオを結ぶ鉄道トンネルです。
1996年から建設が始まり、2016年6月1日に開通しています。
ゴッタルドベーストンネルができる前は、アルプス山脈の峠を越えるために曲がりくねっていた線路を電車が走行していました。
新トンネルによって線路がまっすぐになったことで、電車の走行距離が短くなり、スピードも出せるようになったため、走行の時間短縮につながりました。
この路線は、スイスのチューリッヒとイタリアのミラノを結んでいるのですが、所要時間が3時間30分から2時間40分に短縮されました。
また、トンネル開通で線路の距離は約30kmも短くなりました。
ゴッタルドベーストンネルを走る電車は、旅客列車は時速250km、貨物列車は時速160kmのスピードを出せるそうです。
かなり速いですよね。
さらに、トンネル開通で輸送力も大きく上がりました。
トンネル開通前のルートだと、標高1150mにある既存トンネルまで山間部の急勾配を上り下りする必要があったため、貨物列車の重量は2000トン以下に制限されていました。
ところが、新トンネルを使ったルートだと、勾配が緩やかになるため、従来の2倍の重量である4000トンまで走れるようになりました。
総工費は日本円で約1兆3000億円ほどの大工事でした。
掘削した土砂量は約2820万トンです。
ちなみに、土かぶりが最大2300mで、これも鉄道トンネルの世界一記録を更新しました。
本坑の8割はTBM(トンネルボーリングマシン)で施工されました。
工事のピーク時には2400人もの現場作業員が入り、5工区に分かれて工事を進めていました。
途中、南側の工区で予想外に地質が悪い場所が出てきたため工事が難航したトラブルもありましたが、工区の区切り方を変更して対応したそうです。
もともとは、完成は2015年の予定でしたが、こうした予定外のトラブルもあり、2016年の開通となりました。
現在、別のトンネルであるツィンメルベルクベーストンネルとチェネリベーストンネルが建設中で、2つのトンネルが完成すればさらに1時間の時間短縮が可能になります。
将来的には、1日で最大65本の旅客列車と、260本の貨物列車を運行する計画のようです。
世界の鉄道トンネルの長さランキング
鉄道トンネルの長さ世界1位がスイスのゴッタルドベーストンネルになったわけですが、鉄道トンネルの長さランキングを調べてみると面白いことが見えてきます。
- 1位:スイス・ゴッタルドベーストンネル・57.1km
- 2位:日本・青函トンネル・53.85km
- 3位:英仏海峡トンネル(イギリスとフランスの間のドーバー海峡を通る海底トンネル)・50.5km
- 4位:スイス・レッチュベルクベーストンネル・34.6km
- 5位:中国・新关角隧道(New Guanjiao Tunnel)・32.6km
- 6位:スペイン・グアダラマトンネル・28.4km
- 7位:中国・太行山隧道(Taihang Tunnel)・27.8km
- 8位:日本・八甲田トンネル・26.5km
- 9位:日本・岩手一戸トンネル・25.8km
- 10位:ウィーン・ウィーンの森トンネル(Wienerwald Tunnel)・23.8km
というランキングになります。
トップ10に日本のトンネルが3つもランクインしています。
そして、トップ10のトンネルの総距離は、
- 青函トンネル:53.85km
- 八甲田トンネル:26.5km
- 岩手一戸トンネル:25.8km
を足すと、1位が日本です。
日本はトンネルの掘削技術は世界一とも言われています。
日本は国土が狭いうえに山岳国のため、どうしてもトンネルを掘る必要があります。
特に、トンネルの掘削機械である「シールドマシン」は、効率よくトンネル工事を進められます。
シールドマシンは、
- トンネルを掘る
- トンネルの壁を貼り付ける
- また掘り進める
- トンネルの壁を貼り付ける
・・・という工法で、掘ることと壁を造ることを同時に行っていくようなイメージです。
ちなみに、スイスのゴッタルドベーストンネルを掘ったTBM(トンネルボーリングマシン)は、掘ることとトンネルの壁を造ることは別工程で行うものです。
日本の青函トンネルのすごいところは、建設開始が1961年、完成が1988年であったことです。
今よりもトンネル掘削技術が未発達だった時代に、世界一長い海底トンネルを掘った日本人はすごいですよね。
まとめ
調べてみたのですが、今のところスイスのゴッタルドベーストンネルを上回る長さのトンネルの工事計画はまだなさそうです。
しばらくはスイスのゴッタルドベーストンネルが世界一の鉄道トンネルとなりそうですね。
ヨーロッパ有数の山岳国であるスイスは、鉄道の発達は革命と言っていいでしょう。
イタリアとの輸送が便利になることで、人の流れ、モノの流れ、お金の流れが変わっていきそうですね。