2019年に新国立競技場が完成しました。
旧国立競技場の老朽化と、東京五輪招致に向けてのことです。
コロナショックにより開催は2021年となりましたが、東京五輪のメインの会場となるでしょう。
この記事では建設費などから、新国立競技場を紐解いていきます。
目次
新国立競技場の建設費用は約1569億円【過去の五輪会場やスタジアムと比較】
2019年11月30日に、約3年の工事の末に新国立競技場が完成しました。
建設費用は約1569億円。
過去のオリンピック・パラリンピックのメインスタジアムと比較すると、かなり高い建設費がかかっています。
新国立競技場と過去の五輪会場の建設費の比較
新国立競技場と、下記の五輪会場の建設費の比較が下記のとおり。
- シドニー:約680億円
- アテネ:約350億円
- 北京:約500億円
- ロンドン:約800億円
- リオ:約550億円
- 東京:約1569億円
新国立競技場の建設費が高騰した主な理由は、下記の2つです。
- 東日本大震災
- 消費税の増税
【ちなみに】新国立競技場と国内のドームとの建設費の比較
参考までに、新国立競技場と国内のドームの建設費の比較は、下記のとおり。
建設費 | 収容人数 | |
東京ドーム | 約350億円 | 約55000人 |
名古屋ドーム | 約405億円 | 約49000人 |
京セラドーム | 約696億円 | 約55000人 |
新国立競技場 | 約1569億円 | 約80000人 |
用途や時代が違うといえど、なかなか割高な建設費がかかっていることがわかります。
新国立競技場の建設費は当初の半値以下になった
実は、新国立競技場の設計は、最初イギリスの建築家ザハ・ハディドさんに依頼されていました。
ところが最終的な建設費が3500億円近くまで膨れ上がったことで、新国立競技場の設計は2015年に一度白紙になっています。
ザハ・ハディドさんの設計だと、年間維持費だけでも約41億円かかるとされ、再度設計が練り直されることとなったのです。
新国立競技場のコンペに参加した建設会社一覧と設計者
再度行われたコンペでは、下記のA案とB案で争われました。
- A案:大成建設・梓設計・隈研吾
- B案:清水建設・大林組・竹中工務店・日本設計・伊東豊雄
結果的に、A案が採用。
大成建設・梓設計・隈研吾氏によって、新国立競技場は建設されることになりました。
新国立競技場の建設計画
新国立競技場は、下記の規模の建造物です。
- 座席数:約6万席(旧国立競技場より約6000席多い)
- 収容人数:約8万人
- 地下2階、地上5階で高さ47.4m
コンセプトは「杜のスタジアム」で、国産の木材が多く使われています。
ひさし(天井部分)には、47都道府県の木材が使用されており、スタジアムの北には北海道の杉、南には沖縄の琉球松を使用しています。
また、ひさしにはガラスも使われており、太陽光を取り込みやすい設計になっています。
外の風を取り込む設計
2021年の東京五輪は夏開催なので、空調が重視されます。
スタジアムの地上部分は層になっており、外の風を取り込む設計になっています。
気流創出ファンも設置されているので、空気の対流が起こりやすい設計。
暑い空気が、スタジアムの天井に空いた大きな穴から抜けていきます。
反対に、冬は冷気が屋根を通り抜ける設計になっているので、客席が寒くならないようになっています。
客席に多くの工夫がある
新国立競技場の客席の特徴は、イスがモザイク柄になっていることです。
白、灰色、茶色、黄緑、深緑の5色があり、森の木漏れ日をイメージしています。
また、客席がモザイクであることで、空席が目立たないようになっています。
客席の傾斜は、
- 1層:20°
- 2層:29°
- 3層:34°
となっており、高い階層でもトラックを近く感じる設計ですね。
ホタルが飛び交うような風のテラス
新国立競技場の3階には「風のテラス」があります。
天井のライトは曲線を描いていて、ホタルが飛んでいるところを表現しています。
いかにも日本らしい設計になっていますよ。
5階部分には1周850mの回廊があり、東京の景色を一望することができます。
天気が良いと富士山も見えるみたいです。
記録が出やすい陸上トラック
新国立競技場の陸上トラックには、イタリア・モンド社の高速トラックが使用されています。
走りやすく、記録が出やすいトラックなので、素晴らしい記録が生まれそうですね。
また、選手の足の疲労を軽減するトラックなので、選手にも優しいトラックと言えるでしょう。
新国立競技場の建設地
新国立競技場の建設地は、東京都新宿区霞ヶ丘町10-1です。
近くで有名な場所をあげると、
- 明治神宮球場(ヤクルトスワローズ本拠地)
- 明治神宮外苑
- 新宿御苑
などがあります。
最寄り駅は、下記のとおりです。
- JR:千駄ヶ谷駅
- 都営大江戸線:国立競技場駅
旧国立競技場が老朽化のため解体され、そこに新国立競技場が建設されています。
新国立競技場の建設問題【東京五輪後の使い道】
すでに問題視されているのが、新国立競技場の五輪後の使い道です。
実は、2020年4月現在、東京五輪後の買い手がついていない状態です。
主な問題点は下記の4つ。
- 屋根がない
- サッカーに向かない
- サブトラックがない
- 年間の維持費が約24億円
1つずつ解説していきますね。
【問題①】屋根がない
新国立競技場の屋根には、大きな穴が空いています。
構想段階では屋根つきのスタジアムだったのですが、予算の関係で屋根がありません。
客席には屋根があるのですが、競技トラック部分は屋根がないので、雨天時に競技を行えないデメリットがあります。
【問題②】サッカーに向かない
新国立競技場は、陸上用のトラックがあるのでサッカーには向きません。
トラックがある分、ピッチまで距離があるのです。
多くのサッカースタジアムは陸上トラックがないので、選手を近くで見ることができます。
もしサッカーのゲームに使用するなら、改修が必要かもしれません。
【問題③】サブトラックがない
陸上選手がウォーミングアップをする、サブトラックがありません。
東京五輪のときは、仮設のサブトラックを造るようですが、大会終了後には壊されます。
つまり、東京五輪後は陸上競技を行えません。
陸上トラックがあるのに、陸上競技を行えないので、
- 改修する
- サブトラックを造る
のどちらかが必要になってくると考えられます。
【問題④】年間の維持費が約24億円
新国立競技場の年間維持費は、約24億円です。
これが、五輪後の買い手がつかない大きな要因でしょう。
オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとしては良いですが、その後の利用が難しいこともあり、なかなか買い手がつかない状態です。
過去の五輪会場のその後
過去のオリンピック・パラリンピックのメインスタジアムのその後は、会場によって様々。
成功例は、1996年アトランタオリンピックのセンテニアル・オリンピックスタジアムでしょう。
五輪終了後は、改修されてMLB(野球)のアトランタ・ブレーブスのホームになっています。
アメリカのベースボールビジネスは巨額のお金が動くので、投資回収に成功しているといえます。
新国立競技場も、アトランタのような五輪後にできることを祈るばかりです。
まとめ【新国立競技場の建設費は約1569億円だが、五輪後の使い道が問題視される】
この記事をまとめます。
- 新国立競技場の建設費は約1569億円
- 過去の五輪メインスタジアムより、かなり高額の建設費用がかかった
- 新国立競技場の建設会社は大成建設
- 杜のスタジアムとして、自然をとりいれたスタジアムになっている
- 五輪後の使い道が問題視されており、まだ買い手が見つかっていない
新国立競技場について、参考になればうれしいです。
結論、多くの工事が東京五輪後に回されたため、極端に工事が減ることはないと考えられます。
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