東京タワー建設を徹底解説【鳶職人たちの死のキャッチボール】

東京タワー建設を徹底解説【鳶職人たちの死のキャッチボール】

東京のシンボルである東京タワー。

東京タワーがなぜ建設され、どう建設されたのか解説します。

昭和30年代(1950年代)の話とは思えないほど、高度な建造物です。

東京タワー建設を徹底解説【転落による鳶職人の死亡事故もあった】

東京タワー建設を徹底解説【転落による鳶職人の死亡事故もあった】

東京タワー建設について解説します。

  • そもそも東京タワーが造られた理由
  • 東京タワーの構造
  • 鳶職人たちの命がけの活躍【死のキャッチボール】

などをまとめています。

そもそも東京タワーが建設された理由

東京タワーができた昭和33年12月までは、各放送局が自前で電波塔を建ててテレビの電波を送っていました。

高さは150mくらいで、半径70kmくらいしか電波を飛ばせなかったんです。

半径70kmだと、下記には電波が届きません。

  • 栃木県のほぼ全域
  • 埼玉県深谷より北
  • 静岡県全域

各局が独自の電波塔を建てると、

  • 東京の景観を損ねる(鉄塔だらけの街になる)
  • 羽田空港の離発着時の危険

などが問題視されていました。

しかも、テレビのチャンネルを変えるごとに、テレビのアンテナの向きを変えないと行けませんでした。

そこで、300m級の高いテレビ等を建設して電波塔を一本化し、半径100km圏内にテレビ電波を届かせる計画が持ち上がったんです。

東京タワーの建設会社は竹中工務店【設計は内藤多沖と日建設計】

東京タワーの建設会社は、あの竹中工務店です。

日本を代表するスーパーゼネコンとして有名ですよね。

設計は内藤多沖氏と日建設計で行われました。

内藤多沖氏は、

  • 大阪の通天閣
  • 名古屋のテレビ塔

などの設計実績があり、東京タワー設計を任されたそうです。

ただ、いくら高層建築の実績があるとはいえ、当時では世界一高い建築物を造るということで、設計は難航したそうです。

構造計算だけで3ヶ月かけて、図面は1万枚以上になりました。

当時は機械もないので、手計算で東京タワーを設計したのですから圧巻です。

現場監督は当時31歳だった竹山正明氏。

竹山氏はNHKの電波塔建設の実績があったため、若手ながらの大抜擢でした。

東京タワーに求められた耐震性と耐風性

東京タワーの設計で重要だったのは、耐震性と耐風性です。

  • 日本は地震が多い
  • 東京湾から吹く強風に耐えなければいけない

などの理由からです。

結果として、

  • 耐震性:関東大震災クラスの揺れに耐えられるよう設計
  • 風速90mに耐えられる耐風性

を実現しました。

事実、東京タワーは一度も壊れていませんよね。

  • 東京タワー完成から1年後の伊勢湾台風
  • 2011年の東日本大震災

などでも、倒壊していません。

昭和30年代に設計された高層建築なのに、現代でも通用する耐震性と耐風性です。

東京タワーの耐震構造【免震構造という方が合ってるかも】

東京タワーは、部材を三角形に組み上げる「トラス構造」が採用されました。

地震の揺れを吸収するために、部材同士を完全に固定せず、わざと余裕をもたせています。

その余裕がしなやかに揺れを吸収してくれます。

旧日本建築のような発想に近いかもしれませんね。

建設中の東京タワーは朝6時~夜6時まで高所作業が続いた

東京タワー建設は、急ピッチで進められました。

昭和32年6月に工事が始まって、完成は昭和33年の12月だったので、たった1年半で建設したんです。

つまり、納期はかなりタイト。

のべ約22万人の作業員が工事に関わり、朝6時~夜6時までの長時間作業が続きました。

東京タワー建設で大活躍した鳶職人たち

高層部分の建築は、当然、鳶職人たちが行いました。

※鳶の若頭は桐生五郎氏で、当時なんと25歳でした。

鳶職人たちは、もちろん命綱はありません。

多いときでは、約60人もの鳶職人が高層部で仕事をしていました。

納期が厳しいことから、風速15m/sまでなら作業をしていたようです。

東京湾からの突風が吹くこともあります。

まさに命がけの工事でした。

当時はクレーンもないので、部材はゴンドラに乗せて高所に運んでいました。

東京タワー建設の伝説【死のキャッチボール】

鉄骨をつなぐ鋲(びょう)を、まるでキャッチボールのように渡していたのが東京タワー建設の伝説。

通称「死のキャッチボール」です。

800℃まで熱した鋲を、各作業場所までパスします。

鋲を受け取る鳶職人は、金属製のバケツで800℃の鋲をキャッチします。

ときには、20mクラスのロングパスもあったそうです。

死のキャッチボールは、約28万回も繰り返されました。

このようにして東京タワーは、なんとすべて手作業で建設されています。

東京タワー建設中におきた死亡事故【死者数1名】

東京タワー建設では、1名の尊い命が失われています。

1958年6月30日に、鳶職人1人が強風に煽られて高さ61mから転落して死亡しました。

当時はの足場は30cmほどしかなく、前述のとおり命綱もなし。

鉄骨にしがみつきながらの作業も多かったそうです。

東京タワーには戦車の鉄が使われている

東京タワー建設には、頑丈な鉄が必要でした。

ところが、時代は高度経済成長期。

国内で品質の良い鉄を手に入れるのは困難でした。

ところがちょうどその頃、朝鮮戦争で休戦協定が結ばれ、アメリカの戦車が民間に払い下げになりました。

東京タワーでは、そのアメリカの戦車の鉄を使用。

戦車の鉄は良質なので、東京タワーは頑丈に造られているというわけです。

東京タワーの土台の建設

東京タワーで最重要なのは、当然ながら土台です。

高層建築なので、土台がダメな場合の損害は大きすぎます。

海抜0m地点まで穴をあけ、長さ15m直径2mの円柱型の杭を、東京タワーの足1本に8本打ち込んであります。

つまり、かなり頑丈な基礎工事をしています。

また、東京タワーの4本足は、下にいくほど広がっていますよね。

本来であれば、タワーの自重で足が広がってしまいます。

それを防ぐために、直径5cmの鋼の棒を各足に20本を対角線上に結んであります。

東京タワーの土台は、かなり頑丈と言えるでしょう。

東京タワーの建設期間と建設費

前述のとおり、東京タワーは昭和32年6月に工事がスタートし、昭和33年12月竣工しています。驚くべきはそのスピード。

当時で世界一高い建造物でありながら、わずか1年半で完成させています。

昭和34年から東京タワーを使う予定になっていたため、絶対に遅らせることはできなかったそうです。

ちなみに、東京タワー建設費は約30億円です。

東京タワーの高さは333m【エッフェル塔を抜いて当時の世界一】

東京タワー設計当初は高さ380mで計画されましたが、資金的な問題等で333mになっています。

それでも、当時世界一高い建造物であったパリのエッフェル塔(312m)を抜いて、東京タワーが世界一の高さになりました。

東京タワーの正式名称は「日本電波塔」といい、東京都港区の芝公園に建設されました。

先端のアンテナ部分は、

  • NHK
  • テレビ朝日
  • フジテレビ
  • 日本テレビ放送網
  • TBS
  • テレビ東京

のアンテナが取り付けられています。

【豆知識】東京タワーの色はデザインではない

東京タワーの色といえば白と赤のイメージですが、正確には、

  • インターナショナルオレンジ

の2色です。

これはデザインではなく、航空法で定められたカラーのため、なんと他の色にはできないんです。

東京湾から吹く潮風が強いため、5年に一度は塗装の塗り替えが行われますが、他の色になることはありません。

さらに難しかった東京スカイツリー建設

さらに難しかった東京スカイツリー建設

東京タワー完成から54年後、東京スカイツリーが完成しました。

テレビがアナログ放送からデジタル放送になるにあたり、東京スカイツリーが建設されました。

東京スカイツリー建設は、東京タワー建設のノウハウが活かされています。

しかも、東京スカイツリーは3本足。

東京タワーより難易度が高い建設となりました。

ちなみに、東京スカイツリー建設については、

東京スカイツリーの建設について【海外の高層建築も紹介】にまとめているので、興味あれば読んでみてください(^^)

東京スカイツリーの建設について【海外の高層建築も紹介】

まとめ【東京タワー建設風景は壮大だった】

まとめ【東京タワー建設風景は壮大だった】

この記事をまとめます。

  • 東京タワーは、東京のテレビ塔を一本化するために建設された
  • 当時、世界一高い建造物だったため、設計はハイレベルだった
  • 東京タワーの耐震性と耐風性はかなり優れている
  • 納期が短く、危険な状況での工事もあった
  • 鳶職人は死のキャッチボールをして、命がけで工事にあたった
  • 東京スカイツリー建設は、東京タワー建設が活かされている

東京タワー建設についてまとめてみました。

参考になればうれしいです。

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