最近は古民家再生が流行ってるみたいだけど、耐震補強が必要なのかな?
こういった疑問に答える記事です。
本記事の内容は下記のとおり。
- 古民家の耐震補強は注意が必要【古民家は免震構造がある】
- 古民家の耐震補強工事の内容【基礎工事も重要】
古民家の耐震補強工事は、安易にやってはいけません。
正しい知識がないと、かえって地震に弱くなってしまうリスクがあります。
この記事では、古民家の免震構造や、耐震補強工事の基礎を解説します。
あなたの仕事の参考にしてください。
目次
古民家の耐震補強は注意が必要【古民家は免震構造がある】
古民家の耐震補強の注意点は、古民家の中には免震構造のものがあることです。
古民家=築50年以上の家屋ですが、古い日本家屋ほど免震構造になっています。
耐震構造と免震構造の違い
- 耐震構造=地震に耐える構造(現代建築)
- 免震構造=地震の揺れを受け流す構造(古民家建築)
というイメージです。
考え方でいうと、下記のような感じ。
- 耐震構造:地震より強い家を造れば壊れないよね!
- 免震構造:どうせ自然の力には勝てないんだから、揺れを逃せばいいよね
つまり、そもそもの考え方が違います。
実は免震構造は、いまだに理屈が解明されていない部分があります。
よって、現在の建築基準法では耐震基準しか明文化されていません。
耐震補強が生まれた理由【1995年の阪神淡路大震災】
耐震補強が広まったのは、1995年の阪神淡路大震災からです。
阪神淡路大震災では、古民家の倒壊が相次いだのです。
「古民家=地震に弱い」というイメージがつき、耐震補強工事が増えた感じですね。
そもそも建築基準法では「建物と地面は固定しないといけない」とされているので、石の上に置いているだけの古民家は「地震に弱い」というイメージも広がりました。
【疑問】法隆寺は1300年以上も地震で倒壊していない
ここで疑問なのが、世界最古の木造建築である法隆寺。
1300年以上前の木造建築ですが、何回も大震災を経験してきましたが、壊れていません。
当然、法隆寺には耐震補強工事はされていません。
ということは、旧来の日本建築は地震に強いことがわかります。
ちなみに、法隆寺については、
法隆寺の建築技術を解説【1300年以上前の建築的特徴は現代も使える】にまとめています。
古民家の免震構造の2つの特徴
古民家の免震構造は、下記のような特徴があります。
- 石の土台の上に家を乗せてるだけなので、地震の揺れをもろに受けない
- 地震のときには、木材同士がしなやかに動いて、揺れを逃していく構造
「しなやかに動く」は、動画で見てもらった方がわかりやすいので、下の動画を再生してみてください。
引用元:Youtube「伝統的構法で作られた木造建築物の耐震性能検証実験|横田建築研究所 – 建築研究部」
たしかに、しなやかに揺れを逃してる感じがしますよね。
木材に凸凹を作り、木材同士を組み上げる「木組み」という手法で建てられています。
これが揺れを逃す仕組み。
実はこの手法、東京タワー建築でも行かされています。
東京タワーのつなぎ目には余裕があり、地震の際は揺れを逃す設計です。
事実、東日本大震災でも倒壊していませんよね。
ちなみに、東京タワーについては、
東京タワー建設を徹底解説【鳶職人たちの死のキャッチボール】にまとめています。
古民家に免震構造は建築基準法に適用していない
前述のとおり、現在の建築基準法では「建物と地面は固定しないといけない」とされているので、地面と固定されてない古民家は「建築基準法に適用していない」となります。
建築基準法に適用していない=違法ではなく、認められている感じ。
でも「できたら耐震補強をしてね」という状態ですね。
古民家を維持する人は、耐震補強をする人もいるのでニーズはあります。
【注意】古民家の安易な耐震補強は危険
ただし、古民家の安易な耐震補強工事は危険です。
そもそも免震構造の古民家に耐震補強をすると、かえって地震に弱くなるリスクもあるからです。
結論、正しい知識もなく安易に古民家に耐震補強をするのはやめましょう。
この辺は、古民家建築の知識が必要です。
古民家の状態や構造にもよりますね。
一般社団法人全国古民家再生協会では、古民家建築の勉強ができるので参考にしてください。
メンテナンスをしてない古民家は地震に弱い
古民家が免震構造といっても、さすがにメンテナンスしてない古民家は地震に弱いです。
地震に弱い古民家の特徴は、下記のとおり。
- 木材が腐っている
- 壁が崩れている
- シロアリの被害がある
- 基礎が弱い
特に、瓦屋根でボロボロの古民家だと、瓦の重みで大きく揺れて倒壊する恐れがあります。
- 瓦の下に土が入っている
- 屋根が重くて開口部が多い
- 柱が劣化している
という古民家は耐震性が低いです。
反対にいうと、メンテナンスがしっかりしていれば免震構造の威力を発揮します。
事実、2011年の東日本大震災では、メンテナンス状態のよかった古民家は倒壊していません。
参考:リフォーム産業新聞「被災地の今(3)伝統工法の家は大津波でも残った」
古民家の耐震補強工事の内容【基礎工事も重要】
主な古民家の耐震補強工事の内容は、下記のとおり。
- 地盤をコンクリートで補強
- 壁を増やす(耐力壁)
- 木材同士を金属やダンパーで補強
- 瓦屋根をスレートなど軽いものに変える
- ジャッキアップや曳家で、基礎をコンクリートで固める
耐震診断の主な項目は下記の3つがあり、総合的に判断する必要ありです。
- 地盤の耐震性
- 基礎の耐震性
- 建物の耐震性
中には、基礎部分が空洞になっている古民家があります。
日本は高温多湿なので、床下の風通しをよくするための構造ですが、状態によっては耐震補強が必要です。
すでに家が建ってしまっているので、
- ジャッキアップ
- 曳家
で古民家をずらす必要があります。
「曳家」をわかりやすくいうと、家屋部分をレールに乗せてずらすイメージです。
動画で見た方がイメージが湧くと思うので、下の動画を参考にどうぞ。
引用元:Youtube『古民家再生「曳家工事」吉田建築計画事務所」
耐力壁を入れるとともに断熱材も入れるのが一般的
古民家は、断熱材が使われてないケースがあります。
夏は涼しくて過ごしやすいのですが、冬は極寒です。
なので、耐力壁を入れるときに断熱材も入れるのが一般的。
古民家の風合いを残しながら、暖かい住まいにすることができます。
この辺も動画がわかりやすいと思うので、下の動画を参考にしてください。
引用元:Youtube「鈴鹿市 リフォーム 古民家 耐震補強 リノベーション 1 オフィスエム」
まとめ【古民家の耐震補強工事は正しい知識が必要】
この記事をまとめます。
- 現代建築は耐震構造、古民家は免震構造なので、そもそも地震の考え方が違う
- 阪神淡路大震災で古民家は地震に弱いイメージになったが、法隆寺は1300年以上も倒壊してない
- 古民家の免震構造は、地震の揺れを受け流す構造
- 古民家の安易な耐震補強工事は危険【正しい知識が必要】
- 基礎工事を含めて、古民家の耐震補強工事は独特
あなたの仕事の参考になればうれしいです。
ちなみに、本記事内で紹介した2記事を再度ご紹介しておきます。
知識を深めるためにもどうぞ。