法隆寺の建築技術を解説【1300年以上前の建築的特徴は現代も使える】

法隆寺の建築技術を解説【1300年以上前の建築的特徴は現代も使える】

世界最古の木造建築である、法隆寺の建築について解説します。

1300年も前から、高いレベルの建築技術が使われていたのが驚きです。

現代建築でも十分使える技術を見ていきましょう。

法隆寺の建築技術を解説【ギリシャも含めた建築様式】

法隆寺の建築技術を解説【ギリシャも含めた建築様式】

ご存知のとおり、法隆寺は世界最古の木造建築物です。

正確には、法隆寺の中の、

  • 五重塔
  • 金堂
  • 中門
  • 回廊

が世界最古です。

1993年に、日本初の世界遺産に登録されています。

法隆寺の建築年と建築者

法隆寺は西暦607年に創建されています。

しかし、670年には一度全焼しており、現在の法隆寺は670年に再建されたものです。

建築者は、下記の2人。

  • 聖徳太子
  • 推古天皇

法隆寺を創建して、推古天皇は移り住んだと言われています。

法隆寺の五重塔の建築方法は地震に強い

法隆寺の建築方法でよく注目されるのは、五重塔の耐震性ですね。

高さは32mもあり、現代のビル10階分に相当します。

五重塔の建築様式は、中国から伝わった技術を応用したもの。

「積み上げ構造」といい、まず各階を別に造り、どんどん積み上げる建築方法です。

各階の接合部は柔軟に動くようになっており、これが地震の揺れを軽減していると言われています。

接合部が柔軟に動くことで、地震が起きても塔がしなることによって倒れないようになっています。

つまり、耐震というよりは「免震」に近いですね。

ちなみにこの工法、1968年の霞ヶ関ビルの建築にも採用されています。

東京スカイツリーにも応用された五重塔の心柱

法隆寺の五重塔内の「心柱」が、東京スカイツリーの耐震構造に応用されたのは有名な話です。

塔の中のてっぺんから、柱を吊り下げることで、揺れを軽減しています。

例えば、

  • 塔が右に揺れれば、心柱は左に揺れる
  • 塔が左に揺れれば、心柱は右に揺れる

という作用で、揺れを軽減していると考えられています。

現在の法隆寺に使われている心柱は、594年に伐採されたもので、約1400年以上前のもの。

1400年前の心柱が、現在も耐震構造として生きています。

五重塔はヒノキで造られているので耐久性が高い

五重塔は、ヒノキで造られています。

ヒノキは耐久性が高い木材として有名。

伐採されてから200年で強度が増し、1000年かけて徐々に強度が落ちていきます。

しかも、五重塔は釘を使っていません。

ヒノキの部材を組み上げることで、頑丈な造りになっています。

【なんと】全国にある五重塔は地震で倒壊した記録がない

法隆寺に限らず、五重塔は全国にありますが、1つも地震による倒壊の記録がありません。

つまり五重塔の耐震性は、かなり昔から立証されているということ。

1000年以上も前の建築物とは思えませんね。

法隆寺の五重塔の建築方法は火災にも強い

ちなみに、法隆寺の五重塔の建築方法は火災にも強いです。

実は、五重塔のひさしの中に土を仕込んであるんです。

火災が起きると、ひさしの中の土が下の階のひさしにつもり、鎮火してくれる仕組みです。

五重塔が最後に全焼したのは670年。

それ以後、全焼した記録がないため、火災に強いと言えますね。

法隆寺の金堂・回廊・中門の建築的特徴は古代ギリシャの建築様式

法隆寺の金堂・回廊・中門には、なんと古代ギリシャの建築様式が使われています。

「エンタシスの柱」といって、柱の真ん中部分を膨らませる工法です。

なんと、ギリシャのパルテノン神殿の建築技術です。

なぜ古代ギリシャの建築技術が、7世紀の日本に伝わっているのかが不思議ですよね。

シルクロードの終着地は、法隆寺だったのかもしれません。

【驚愕】昭和の大修理でも直すところは少なかった

法隆寺は、1934~1985年まで大修理をしていました。

法隆寺の木材をすべてバラして、劣化が著しい木材を替えて建て直す作業です。

当時は大掛かりな作業になると思われていたが、実際にバラしてみると木材の状態はかなりよかったそうです。

結果的に、木材の取り替えは全体の3割程度。

取り替えた部分は、軒など雨風にさらされる部分だけでした。

驚異的な保存状態の良さが、昭和の技術者たちを驚かせたそうです。

法隆寺の保存状態が良かった理由【宮大工が近くに住んでいた】

保存状態が良かった理由の1つが、法隆寺の近くに宮大工たちが住んでいたこと。

法隆寺の保守点検は、宮大工が代々受け継いできました。

1300年以上も保たせるためには、そうした日々のメンテナンスがあってこそ。

13世紀と17世紀には、大規模修繕工事が行われた記録が残っています。

昭和の大修理の時に金堂がちょっと燃えた

1934~1985年の昭和の大修理での話。

1949年に、金堂内部の柱と壁画が燃える火災が起きました。

しかし、事前に法隆寺の裏山に消火用の貯水池が造られていたのです。

貯水池があったことで、小規模な火災で済みました。

ちなみに、1949年の火災をきっかけに「文化財保護法」が制定されています。

【ちなみに】1944年に法隆寺は一度解体されている

意外ですが、1944年に法隆寺は一度解体されています。

当時は戦争中で、戦火を逃れるためです。

一度解体して、部材を疎開させたそうです。

戦後、1947年に再建されています。

現代建築にも生かされる法隆寺の建築技術

現代建築にも生かされる法隆寺の建築技術

法隆寺の建築技術が活かされた、代表的な建築物は下記のとおり。

  • 霞ヶ関ビル(1968年)
  • 東京スカイツリー(2012年)

東京スカイツリーは、前述のとおり法隆寺の五重塔の心柱が応用されています。

詳しくは、東京スカイツリーの建設について【海外の高層建築も紹介】にまとめています。

東京スカイツリーの建設について【海外の高層建築も紹介】

また、現在の世界最高階数の木造建築は、カナダの「ブロック・コモンズ」で18階建てです。

そして、現在進行中の「木造の高層建築」の計画があります。

階数
リヴァー・ビーチ・タワー アメリカ 80階建て
住友林業の木造高層建築 日本 70階建て

法隆寺の建築技術は、世界中で活かされています。

まとめ【1300年以上経っても法隆寺の建築技術は素晴らしい】

まとめ【1300年以上経っても法隆寺の建築技術は素晴らしい】

この記事をまとめます。

  • 法隆寺の五重塔の建築方法は地震に強い
  • 五重塔の心柱は、東京スカイツリーにも応用されている
  • 五重塔はヒノキで造られているので耐久性が高い
  • 法隆寺にはギリシャのパルテノン神殿のエンタシスの柱が採用されている
  • 法隆寺の建築技術は世界で活かされている

参考になればうれしいです(^^)

ちなみに、京都の平等院鳳凰堂の建築技術について、

平等院鳳凰堂の建築様式は空に浮いているように見えるにまとめているので、興味あればどうぞ(^^)

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