この記事は、施工管理の未経験者さん向けに「施工管理の安全管理」について解説していきます。
この記事でわかること
- 施工管理の安全管理の仕事内容
- 安全管理に必要な3つの能力
- 施工管理の安全管理を勉強する方法
私たちワット・コンサルティングは、施工管理の技術者派遣の会社です。
未経験から施工管理になりたい方を募集しています。
施工管理の安全管理とは、工事現場で事故が起きないように対策することです。
安全に働くために、なくてはならない業務です。
未経験から施工管理に転職を考える際は、具体的な仕事内容を知りたいものですよね?
安全管理について詳しく理解して、施工管理への転職を検討してみてください。
ちなみに、施工管理には安全管理以外に「品質管理・工程管理・原価管理」といった仕事があります。
これらの仕事については、施工管理の4大管理や5大管理とは|仕事に必要な9つのスキルも紹介にまとめたので、参考にしてみてください。
この記事の監修者
施工管理の技術者派遣を行う会社。これまで1500名以上の未経験者を施工管理として育成した実績あり。
- 労働者派遣事業許可番号 派13-304593
- 有料職業紹介事業許可番号 13- ユ-304267
- 特定建設業 東京都知事許可 (特-1) 第150734号
目次
施工管理の安全管理とは
施工管理の安全管理は、建設現場で働く人々の命を守り、工事を安全に進めるための業務です。
厚生労働省が公表した令和5年の労働災害発生状況によると、2023年は、休業4日以上を伴う死傷者数が14,414人に達しています。
これは、前年より減少(0.9%減)したものの、依然として高い水準です。
主な事故原因には、墜落・転落(27.0%)やはさまれ・巻き込まれ(14.3%)が挙げられます。
労働災害を防ぐためには、安全管理の徹底が欠かせません。
事故が発生すると工事に支障が出やすい
建設現場で事故が発生すると、工事に以下のような支障が出ます。
事故による支障
- 事故で作業が中断し工期が大幅に遅れる
- 事故後の修復や対策強化で予算が増加する
- 発注者からの信頼を損なう
工事への悪影響を最小限に抑えるために、安全管理は行われます。
施工管理が行う11の安全管理
施工管理が実施する安全管理をさらに具体的に解説すると、以下のような業務があります。
施工管理が行う安全管理
- 安全管理計画を作成する
- KYKやKYTの実施
- 天候や季節ごとの安全対策
- 現場の確認や点検
- 5S運動の徹底
- 重機や設備の点検
- 現場作業員の健康管理
- 現場従業員に対する安全研修
- 工事作業の進行手順を徹底してもらう
- 現場のヒヤリ・ハットを全員で共有
- 事故発生時の対応策を決めておく
仕事のイメージになるので、1つずつチェックしていきましょう。
安全管理計画を作成する
安全管理は「安全管理計画書」に基づいて行われます。
この計画書は工事現場で働く全員が共有し、事故を防ぐための具体的なルールを示したものです。
法律でも、この計画書の重要性が定められています。
安全管理計画書には、次のような取り組みがあります。
安全管理計画書による取り組み
- 朝礼で作業員全員の安全意識を高める
- ヘルメットや安全器具の点検を行う
- 現場を巡回し安全に問題がないか確認する
KYKやKYTの実施
KYKやKYTの実施は、作業中の危険を事前に想定し、事故を防ぐための対策を考える取り組みです。
KYKとは
「危険予知活動」の略称で、朝礼やミーティングでその日の作業の危険を全員で確認し、安全対策を考える活動のことをいいます。
KYTとは
「危険予知トレーニング」の略です。作業や現場状況をシミュレーションして予想されるリスクを洗い出し、事故を防ぐ対策を話し合う実践的な訓練のことをいいます。
事前にリスクを把握することで、現場での危険回避がしやすくなり、事故防止につながるでしょう。
天候や季節ごとの安全対策
作業環境の安全確保には、天候や季節に応じた対策も必要です。
建設現場では、天候によって作業員が危険にさらされることがあるため、事故を未然に防ぐ取り組みが求められます。
安全対策として以下の取り組みがあります。
天候や季節ごとの安全対策
- 強風時の建材や資材の飛散を防ぐ
- 夏の高温時は熱中症予防のため水分補給や休憩を徹底する
- 悪天候時は作業中止の判断を迅速に行う
天候や季節に応じた柔軟な安全管理が、事故防止につながります。
現場の確認や点検
現場の確認や点検は、安全な作業環境を維持するために欠かせない取り組みです。
以下に、現場の確認や点検の具体的な取り組みをまとめました。
取り組み項目 | 具体的な対策 |
---|---|
危険要因の発見と改善 | 毎日巡視を行い、潜む危険箇所を発見し速やかに改善する |
高所作業の安全確保 | 手すりや安全ネットの設置、上下で作業が重ならないよう手順を調整する |
重機や設備の点検 | 定期的に点検を行い、故障や事故を防ぐ |
安全区域の確保 | 重機使用時には三角コーンを設置し、作業員が近づかないようにする |
通路の安全管理 | 段差や凹凸を解消し、滑り止めテープや注意看板を設置する |
天候や季節への対応 | 強風や雨での資材飛散や浸水が予測される場合、作業を中止する判断を行う |
確認や点検を徹底することで、現場の安全性を維持し事故を未然に防げるでしょう。
5S運動の徹底
5S運動は、単に現場をきれいにするだけでなく、事故の防止や生産性の向上にもつながる活動です。
5S運動とは
「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つの取り組みを徹底し、作業現場を安全で快適に保つ活動のことです。
5Sの具体的な内容は以下のとおりです。
5Sの内容
- 整理:不要なものを排除する
- 整頓:必要なものを所定の位置に配置する
- 清掃:ゴミや汚れを取り除く
- 清潔:清掃を習慣化してきれいな状態を維持する
- しつけ:5Sを守る意識を共有する
5S運動を徹底することで、作業しやすい環境が整い、転倒や物につまずくといった事故の防止につながります。
さらに、きれいで整理された現場は、危険箇所が見えやすくなり、リスクの早期発見にも役立ちます。
この取り組みの習慣化が、安全で効率的な作業環境の実現に欠かせません。
重機や設備の点検
重機や設備の点検は、安全な作業を維持するための取り組みです。
作業開始前には機器や機材の誤作動や故障がないか確認し、不具合があれば即座に修理を行います。
以下は具体的な点検内容です。
重機や設備の点検内容
- 機械や設備の動作確認を作業開始前に実施
- 足場や型枠など仮設設備の点検・整備の徹底
- 墜落制止用器具や安全ネットの損傷を確認
- ヘルメットや保護具の状態を定期的に確認
- チェックリストを活用し、効率的な点検を実施
専門技術者による定期的な詳細点検を実施し、小さな不具合も見逃さないようにします。
現場作業員の健康管理
安全な作業環境を維持するために、現場作業員の健康管理は必要です。
健康状態に問題がある作業員が現場に出ると、集中力の低下や体力不足により、事故やヒューマンエラーが発生するリスクが高まります。
そのため、作業員の健康状態は毎日確認し、体調に問題がある場合は無理をさせず現場から外すのが原則です。
ポイント
作業開始前には、風邪や疲労、睡眠不足がないかをチェックし、状況に応じて適切な作業配置を行います。
作業中も頻繁に巡視して、体調不良がないかを確認することが求められます。
健康管理の徹底により、事故の発生を未然に防ぎ、作業の効率化と現場の安全性向上につながるでしょう。
現場従業員に対する安全研修
現場従業員に対する安全研修は、すべての作業員が安全意識をもち続け、事故を未然に防ぐための取り組みです。
建設現場では頻繁に作業員が入れ替わるため、新人作業員やベテラン作業員を問わず、安全ルールや禁止事項の徹底した教育が必要です。
ポイント
新たに現場に入った作業員には「新規入場者教育」を実施し、安全対策や作業手順を共有します。
作業環境に応じたリスク予知や回避行動を習得できるよう、全員に安全研修を実施します。
工事作業の進行手順を徹底してもらう
工事作業の進行手順の徹底は、作業の効率化だけでなく、安全を守る上でも大切です。
そのため、以下の取り組みを徹底します。
工事作業の進行手順の徹底について
- 作業開始前に手順を全員で確認し、理解を深める
- 手順ごとに担当者と責任者を明確にする
- 手順が変更になった場合は速やかに全員へ周知する
- 作業中も手順どおりに進めているか巡視して確認する
- 不明点があれば即座に全員で共有し、解決する
これらの取り組みを徹底することで、作業の安全性と効率を両立できます。
現場のヒヤリ・ハットを全員で共有
「ヒヤリ・ハット」とは、重大事故には至らなかったものの、一歩間違えば大事故につながる可能性があった事例を指します。
これらを共有し、改善策を講じることで、同じようなリスクを未然に防げます。
以下は具体的な事例です。
作業内容 | ヒヤリ・ハット事例 |
---|---|
足場作業 | 足場板が破損し、作業員が板ごと転落しそうになった |
吊り荷作業 | 吊り上げ中、鋼材が揺れ落下しそうになった |
仮設通路での移動 | 仮設通路の段差に気づかず、作業員が転倒しそうになった |
資材の取り扱い | 強風により未固定の軽量資材が飛ばされ、作業員に接触しそうになった |
高所作業 | 開口部にフタが設置されておらず、作業員が転落しそうになった |
これらの事例を共有し、具体的な改善策を講じることで、同様のリスクを未然に防げるでしょう。
事故発生時の対応策を決めておく
事故発生時には、迅速かつ適切な対応が求められます。
完全な事故防止は難しいため、発生時に備えた準備が重要です。
以下の対応策を事前に決めておくことで、被害を最小限に抑えられます。
決めておく対応策の例
- 応急処置の備品を常備し救急車を呼ぶ手順を確認しておく
- 警察や労働基準監督署への通報体制を整備する
- 火災や自然災害を想定した対応手順を準備する
- 緊急時の行動指針や避難手順を作業員と共有する
- 事故現場を立ち入り禁止にし二次災害を防止する
事故が発生した際には、けが人の救助を最優先で行い、救急体制を活用して迅速に対応します。
施工管理の安全管理で必要な3つの能力
現場で安全管理を実施するには、以下の能力があると良いでしょう。
施工管理の安全管理で必要な能力
- リスク管理能力
- 問題解決力
- コミュニケーション力
もちろん、転職するタイミングですべての能力を身につけている必要はありません。
新人研修で学んだり、現場で経験したりしながら、身につけていけば大丈夫です。
こちらも1つずつ解説していきます。
リスク管理能力
リスク管理能力とは、事故やトラブルが発生した際に迅速かつ冷静に対応し、被害を最小限に抑えるスキルです。
ポイント
建設現場では予期せぬ事態が起こる可能性が高いため、危険を察知し、的確な判断を下せる能力が求められます。
施工管理は、現場のどこに危険が潜んでいるか、本日の作業で注意すべきポイントは何か、作業員がリスクのある行動を取っていないかを常に把握する必要があります。
重要
細かい問題でも見逃さず「まぁいいだろう」という考えを排除することが大切です。
過去の事故事例の分析や現場での経験を積むことで、危険を予測する力や初動の対応力を高めていけるでしょう。
問題解決力
建設現場での安全管理や工事進行においては、問題解決力も必要です。
現場ではさまざまなトラブルが発生する可能性があるため、迅速かつ適切に対応する能力が求められます。
予想されるトラブル | 対応例 |
---|---|
資材の遅延 | 代替資材の使用や他の供給ルートの確保を手配する |
高所作業中の安全ネット破損 | 作業を一時中断し、ネットを修理・交換して安全を確保する |
近隣住民からの騒音苦情 | 作業時間を調整したり、防音設備を追加して問題を解決する |
現場で問題に直面することで、問題解決力が向上していきます。
コミュニケーション力
建設現場では、職人や作業員、上司、関連会社など多くの人とやり取りするため、円滑なコミュニケーションが、安全性の確保と作業効率の向上につながります。
例えば、以下の場面でコミュニケーション力が役立ちます。
コミュニケーション力の例
- 作業前の挨拶や会話で現場作業員の様子を把握する
- 職人同士の関係が悪化した際に仲裁する
- 近隣住民の苦情に丁寧に対応し信頼関係を築く
コミュニケーション力は、日々の業務を通じて自然と身につき、磨かれていくものです。
経験を重ねながら、少しずつスキルを高めていきましょう。
関連記事:施工管理が職人さんとうまくコミュニケーションを取る13のコツ!人間関係を良好に
施工管理の安全管理は会社の研修で学ぶのがおすすめ
安全管理の進め方を学ぶには、実際に施工管理に転職して、新人研修で学ぶのがおすすめです。
実際に現場で使える安全管理の具体的な方法を習得できます。
ポイント
未経験から施工管理に転職する際は、新人研修が整っている会社を選ぶのがコツです。
安全管理を含め、施工管理の業務を詳しく教えてもらうと、現場に出てからスムーズに働けるでしょう。
転職先を選ぶ際は給与や福利厚生も大切ですが、研修制度もチェックしてみてください。
ワット・コンサルティングの新人研修は業界トップクラス
冒頭でもふれましたが、私たちワット・コンサルティングは、未経験から施工管理・現場監督になりたい方を募集しています。
業界トップクラスの「60日間の新人研修」を実施しているため、
安全管理をしっかり勉強してから働きたい。
という方に合っています。
他にも、ワット・コンサルティングには以下の強みがあります。
ワット・コンサルティングの強み
- 定着率83.2%(業界平均は約70%)
- 未経験者の採用率80%
- 累計1500名の未経験者を育成
- 優良派遣事業者に認定されている
- 社会保険完備+資格取得奨励金あり
転職先の候補に加えてみてください。
施工管理の安全管理について学べる資格
以下の資格を目指して勉強することで、安全管理の知識を習得できます。
施工管理の安全管理について学べる資格
- 施工管理技士
- 安全管理者
資格も取得しておきたい方は、参考にしてみてください。
施工管理技士
施工管理技士は、施工管理に必要な専門知識とスキルを証明する国家資格です。
試験内容には法令や安全対策も含まれ、安全管理について体系的に学べます。
施工管理技士の資格は、工事の種類によって以下の7種類に分けられます。
施工管理技士の種類
- 建築施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 造園施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
令和6年の試験から、年齢条件を満たせば、実務経験がなくても誰でも受験できるようになりました。
安全管理を学びつつ資格も取得できるので、勉強してみましょう。
施工管理技士を取得すると、現場に必要な責任者になれて、年収アップしたり、転職が有利になったりします。
施工管理に転職するなら、施工管理技士を取得するのがおすすめです。
安全管理者
安全管理者は、労働安全衛生法に基づき、職場の安全管理を行う責任者です。
労働災害が発生しやすい建築現場では選任が義務付けられており、危険を未然に防ぎ作業員の健康と命を守る重要な役割を果たします。
安全管理者の業務例は以下のとおりです。
安全管理者の業務例
- 危険箇所を見つけ危険回避の対策をする
- 安全装置や保護具の点検・整備を徹底させる
- 安全教育と訓練を実施する
- 必要に応じて消防・避難訓練を行う
- 安全資料を管理する
安全管理者になるには、所定の条件を満たした上で、厚生労働省が指定する講習を受講する必要があります。
この講習では、法令や災害防止の基本を学び、現場で必要な知識とスキルを身につけます。
安全管理者の取り組みは、現場全体の安全意識を高め、事故のない環境をつくる大切な柱です。
まとめ|安全管理は施工管理の重要な仕事
最後にもう一度、施工管理が実施する安全管理の内容をまとめておきます。
施工管理が行う安全管理
- 安全管理計画を作成する
- KYKやKYTの実施
- 天候や季節ごとの安全対策
- 現場の確認や点検
- 5S運動の徹底
- 重機や設備の点検
- 現場作業員の健康管理
- 現場従業員に対する安全研修
- 工事作業の進行手順を徹底してもらう
- 現場のヒヤリ・ハットを全員で共有
- 事故発生時の対応策を決めておく
また、安全管理について学ぶ場合は、新人研修が整っている会社で学ぶのがおすすめです。
くりかえしですが、私たちワット・コンサルティングは、未経験から施工管理・現場監督になりたい方を募集しています。
業界トップクラスの「60日間の新人研修」を実施しているため「施工管理の基礎をしっかり勉強してから働きたい」という方に合っています。
転職先の候補に加えてみてください。
あなたの転職活動の参考になればうれしいです。