土木技術者の不足が深刻な問題になっています。
とはいえ、この状況下でも人材を採用していかなければいけません。
この記事では、土木技術者が不足している理由と、それに伴う人材採用のコツを解説していきます。
YouTubeやSNSなど、まだ多くの会社が導入していない媒体もあるので、できることから実施してみてください。
少しでも人材採用のヒントになれば幸いです。
それでは、さっそく見ていきましょう!
目次
土木技術者が不足している5つの理由
土木技術者は、職人も土木施工管理も不足している状態です。
厚生労働省が令和3年2月に発表した「土木の職業」の有効求人倍率は6.42倍になっています。
※1人の求職者に対して6.42件の求人がある状態
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年2月分)について」
結論、土木技術者が不足している主な理由は下記の5つです。
- 離職率が高い
- リーマンショック後に土木需要が伸びたから
- ベテランの引退
- 若手が入職してこない
- 人材獲得の競争が激化
1つずつ解説するので、まずは人材不足の背景を把握しておきましょう。
【理由①】離職率が高いから
特に若者を中心に、離職率が高い状況です。
出典:厚生労働省「建設労働者を取り巻く状況について」
離職率が高い主な理由は下記のとおり。
- 体力的にきつい
- 休みが少ない
- 体を壊してしまった
- 給料が不安定(日当だから)
離職率については、施工管理や建設業の離職率は?ブラックな職場を回避する方法に詳しくまとめてます。
また、2008年のリーマンショックで土木業界の仕事が減ったのも、人材不足の原因です。
仕事を失った土木技術者たちは、他の業界・職種に転職してしまい、そのまま戻ってこない人が多いです。
この辺は、施工管理が人手不足の3つの理由【ホワイト企業は離職率が高くない】も参考にどうぞ。
【理由②】リーマンショック後に土木需要が伸びたから
2008年のリーマンショックで土木技術者が離職した後に、土木工事が増えたことで人材不足に陥りました。
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」
略歴は下記のとおりです。
- 平成20年:リーマンショック
- 平成23年:東日本大震災→復興工事
- 平成27年ころ~:東京オリンピック・パラリンピック関連の工事開始
前述のとおり、他の業界・職種に転職してしまった土木技術者が帰ってくることも少なく、人材不足が続いている状態です。
【理由③】ベテランの引退
「団塊の世代」の土木技術者の引退も、人材不足の原因です。
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」
人数が多い世代が退職してしまうことで、今後はさらに人材不足が深刻化する恐れがあります。
会社によっては延長雇用や定年の繰り上げなどを行なって、ベテランに長く働いてもらう対策も必要でしょう。
【理由④】若手が入職してこない
土木業界は、若者にあまり人気がありません。
理由は下記の3つです。
- 3Kのイメージ
- 週休1日
- 長時間労働
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」
このため、若手の入職者が少なく、人材不足が深刻化しています。
後述しますが、若者に興味をもってもらえる施策が必要不可欠です。
【理由⑤】人材獲得の競争が激化
人材不足のため、人材獲得競争が激化しており、それがさらに人材不足を招く原因にもなっています。
具体的には、下記のような人材獲得競争が起きています。
- 自治体の技術者が民間に引き抜かれる
- 民間の技術者が自治体に転職する
- 民間企業同士で人材の取り合いになっている
特に、資本力がない会社は人材獲得が困難で、ますます人材不足に悩む傾向になっています。
出典:市町村における持続的な社会資本メンテナンス体制の確立を目指して参考資料
土木技術者の不足を解消する5つのコツ【採用戦略】
では、土木技術者の不足を解消するコツを見ていきましょう。
具体的には下記の5つです。
- ITを導入する
- 週休2日の導入
- 研修制度を作る
- 福利厚生を強化する
- 複数の求人媒体を活用する
こちらも1つずつ解説するので、できることから実施してみてください。
【コツ①】ITを導入する
できるところからでいいので、ITシステムの導入を検討しましょう。
仕事を効率化できることで、下記ができる可能性があるからです。
- 休みやすくなる
- 残業時間が減る
- 若者が興味をもちやすくなる
求職者は「土木=ITを使ってない」という印象があるため、ITシステムを導入して業務を効率化していることをアピールすると、特に若者に興味をもってもらえることがあります。
具体的におすすめのITシステムは下記などがあります。
- アプリ
- タブレット端末・スマホ
- CIM
- 監視カメラ
- ドローンなど
ITシステムの詳細は、施工管理業務を効率化する便利ツール8選【使いこなす3つのコツも解説】にまとめたので参考にしてみてください。
【コツ②】週休2日の導入
可能であれば、週休2日の導入を検討してみましょう。
特に若者は「週休2日が当たり前」という認識の人もいるため、週休1日だと敬遠される恐れがあります。
ちなみに国土交通省の発表によると、週休2日に切り替えた団体数は下記のとおりです。
- 2017年:31団体
- 2018年:41団体
- 2019年:45団体(予定)
参考:日刊建設工業新聞「週休2日工事ー18年度は41団体で実施/20団体が土日完全休工採用/国交省調査 [2018年11月15日1面]」
業界は週休2日を導入する流れです。
ただし、週休2日の問題点は下記のとおり。
- 日当で働く従業員の給料が減ってしまう
- 工事日が減ることでスケジュールがタイトになってしまう
この辺りは、国が主導でダンピングの防止策などを実行しようとしています。
詳しくは、建設業の週休2日は2021年度末までに実施予定【でも問題は多い】にまとめたので参考にどうぞ。
【コツ③】研修制度を作る
若者など未経験者は、研修制度の有無が気になるからです。
研修制度がないとさすがに不安なので、敬遠されてしまうリスクがあります。
まずはできるところから、研修制度を作ってみるのがおすすめです。
また、ホームページや求人情報にも研修制度の詳細を記入しましょう。
「研修がきちんとしている会社」に見えるだけでも、反応率が変わることがあります。
※「研修はやっているけど、ホームページや求人情報に研修について記載していない」は大きな機会損失かもしれません。
【コツ④】福利厚生を強化する
求職者は福利厚生を見ているからです。
福利厚生が弱いことが理由で応募につながらないこともあるので、少しずつ福利厚生を導入してみましょう。
特に、社会保険の加入は重要です。
求職者としては「社会保険は完備していてほしい」が本音なので、未加入だと応募されないことがあります。
また、国土交通省の「建設業働き方改革加速化プログラム」によると、社会保険未加入業者は建設業の許可・更新が認められなくなるようです。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
結論、社会保険には加入しないといけないので、検討してみましょう。
また、自社で福利厚生制度を作るのが難しければ、外部の福利厚生サービスを使うのも良いでしょう。
代表的な福利厚生サービスは下記などです。
人材獲得のためにも参考にしてみてください。
【コツ⑤】複数の求人媒体を活用する
求人媒体は複数を活用しましょう。
人材を採用できる確率が上がるからです。
具体的には下記のような求人媒体があります。
- ハローワーク
- 求人誌
- 求人サイト
- 転職エージェント
- 技術者派遣
- SNS
- YouTube
- 社員からの紹介
それぞれのメリットとデメリットは下記のとおりです。
※スマホを横にすると見やすいです。
メリット | デメリット | |
ハローワーク | 無料で求人を出せる助成金を使えることがある求人の掲載期間が長い | 地域が限定される応募が多く対応が大変 |
求人誌 | 掲載量が安いものもある | スマホを見る人が多く目に留まりにくい |
求人サイト | 成果報酬が不要多くの人に求人を見てもらえる | 採用できないと掲載料がもったいない掲載期間が限定されている |
転職エージェント | 採用したときだけ成果報酬を払えばいい厳選した人材を紹介してくれるので採用業務を減らせる短期離職されても人材紹介会社が一部返金してくれる | 自社内で採用ノウハウが育たないコストが高い(年収の30%が相場)紹介がないこともある |
技術者派遣 | 必要なときだけ人材を派遣してもらえる不景気に強い | 直接雇用できない自社の技術者が増えない |
SNS | 無料で始められる他社がまだやっていない | 継続的な投稿が必要 |
YouTube | 無料で始められる他社がまだやっていない若者の目に留まりやすい | 動画作成が大変継続的な動画投稿が必要 |
社員からの紹介 | 採用コストがかからない社員の信用で良い人材を作用できる | 採用が安定しない不採用の場合はアフターフォローが必要 |
まだやっていないものがあれば、検討してみてください。
特に、SNSやYouTubeを導入している企業は少ないので、先行者利益を取れるかもしれません。
まとめ【土木技術者が不足しているので戦略的な採用活動を行いましょう】
最後にもう一度、土木技術者が不足している5つの理由をまとめておきます。
- 離職率が高い
- リーマンショック後に土木需要が伸びたから
- ベテランの引退
- 若手が入職してこない
- 人材獲得の競争が激化
そして、人材を採用するコツは下記の5つです。
- ITを導入する
- 週休2日の導入
- 研修制度を作る
- 福利厚生を強化する
- 複数の求人媒体を活用する
ぜひとも、できることから始めてみてください。
少しでも人材採用の参考になれば幸いです。