
普通の業界とはちょっと違うもん。
建設業界でも働き方改革できるのかなぁ?
こういった疑問に答える記事です。
本記事の内容は下記のとおり。
- 働き方改革は建設業では無理なのか?
- 【結論】建設業も働き方改革をしないと、どんどん苦しくなる
世間では「働き方改革」などと言われていますが、建設業は無縁だと思っていませんか?
建設業も国土交通省や大手ゼネコンが主導で、働き方改革を進めています。
結論、条件が整えば働き方改革は実現できるかもしれません。
建設業界の働き方改革と、本当に無理なのかを解説します。
働き方改革は建設業では無理なのか?
働き方改革が建設業でも進んでいます。
でも、現場からは「無理でしょ」という声もあります。
どんな働き方改革があって、実現可能なのかを見てみましょう。
国土交通省では「建設業働き方改革加速化プログラム」を作成して、働き方改革を進めています。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
具体的な働き方改革は、下記の10個です。
- 36協定で残業時間の上限を設ける
- 週休2日制の実施
- 発注者に適正な工期設定の理解を求める
- 建設キャリアアップシステムで適正な評価と給料を実現
- 社会保険未加入業者へのペナルティ
- IT化を促進する企業を支援
- 年次有給休暇を5日間とらなければいけない
- 勤務間インターバル制度
- 月60時間超の残業代は50%アップ
- 同一賃金同一労働
1つずつ解説しますね(^^)
①36協定で残業時間の上限を設ける
建設業界にも36協定が適用されて、残業時間の上限が設定されます。
残業時間の上限は、下記のとおり。
- 1ヶ月:45時間
- 1年間:360時間
ただし、特別な事情があれば年間720時間まで延長できます。
決められた残業時間を超過してしまうと、
- 事業者
- 残業を命じた上司
が罰則の対象になります。
※一応、労働基準法違反なので。
36協定の実施は2024年から。
それまでは、各社の自主的な取り組みとなっています。
一般社団法人日本建設業連合会では、2024年の完全義務化までの残業上限の目安を発表しています。
開始時期 | 年間の残業時間 |
2019年4月 | 年間960時間以内 |
2022年4月 | 年間840時間以内 |
2024年4月 | 年間720時間以内(完全義務化) |
参考:一般社団法人日本建設業連合会「時間外労働の適正化に向けた自主規制の試行について」
36協定は実現できるのか?【発注者の理解とIT化がカギ】
ただでさえ残業体質な建設業界ですが、36協定の実現のカギは、後述する、
- 発注者の理解
- IT化
がカギになるでしょう。
発注者が余裕のある工期に納得してくれて、業務効率を上げるIT化が進めば実現の可能性があります。
建設業界の36協定については、
36協定が建設業でも適用される【現場に浸透できそうな3つの理由】に詳しくまとめているので、読んでみてください(^^)
②週休2日制の実施
2021年度末までに、週休2日制を実施するそうです。
ただし、この週休2日制が一番難しいとも言われています。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
まず、工事日数が減ってしまいます。
今よりさらに工期がタイトになるリスクがありますよね。
解決策は、最初から発注者に週休2日のスケジュールで理解してもらうしかありません。
※発注者への理解については、後述します。
また、日雇い労働者は稼働日が減って、収入が減ってしまいます。
この解決は、日当で働く人たちの社員化案があげられています。
日本建設業連合会では、社員化までの賃金補填も検討しているそうです。
また、業界全体でダンピング(安値で受けて無理な工事)を防止する施策も実施するようです。
週休2日はまだ障壁が高そう
- 日雇い労働者をどうやって社員化するのか
- どうやってダンピングを撲滅するのか
などは、まだ明確な策が出ていない状態です。
根本解決できる方法は、発注者への理解でしょうね。
発注者が週休2日の工期でOKを出してくれればいけるかなと。
ただし別の問題もあって、「元請けは週休2日だけど、下請けは週休1日」という状態も発生するでしょう。
下請けが現場に出てくれば、元請けの現場監督も仕事に行かなければいけません。
みんなで「せーの」で週休2日にできればいいですが、現段階では企業の自助努力で徐々に週休2日が増えている感じです。
期限が「2021年度末まで」なので、意外と時間もありません。
業界全体で一丸となってやらないと、厳しいかもです。
建設業界の週休2日制については、
建設業の週休2日は2021年度末までに実施予定【でも問題は多い】で詳しく解説しているので、読んでみてください(^^)
③発注者に適正な工期設定の理解を求める
国土交通省では「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定して、発注者側に働きかける仕組みを作っています。
また、適正な工期設定がわかるように「工期設定支援システム」を作り、各自治体に周知を進めています。
地域発注者協議会などでも、理解を求める活動をしていくそうです。
ダンピングを廃止できれば、実現可能だと思われます。
「工期はこういうもんです。これ以上は短くできません」と業界全体で決めてしまう感じ。
正直、発注者がOKをくれれば36協定も週休2日も実現できる可能性があります。
④建設キャリアアップシステムで適正な評価と給料を実現
建設キャリアアップシステムとは、建設技術者統一の評価制度を設けることです。
従来のような社内の評価だけでなく、業界全体で通用する評価制度ですね。
- 今までの現場経験
- もってるスキル
- もってる資格
などがデータ化されるので、より給料が高い会社への転職するときの客観的データになります。
より適正な評価を受け、適正な給料をもらうデータになるでしょう。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
2023年に330万人の登録を目標にしているようです。
これは実現できる可能性が高そうです。
⑤社会保険未加入業者へのペナルティ
社会保険の加入率が低いのも、建設業界の悪いところ。
これでは、若い人材がますます建設業界に入ってきません。
なので、社会保険未加入業者は、建設業の許可・更新が認められなくなりました。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
ただし、少々問題もあります。
社会保険未加入は零細企業がほとんど。
社会保険を払える資金がないため、加入していない現状があります。
加入しなければいけないのはわかっていても、加入すると破綻してしまう企業もあります。
廃業する会社が増えれば、働き手も減るでしょう。
零細企業や従業員さんたちをどうフォローするかも、重要なポイントです。
⑥IT化を促進する企業を支援
建設業界は、特にIT化が遅れています。
いまだに紙を使っている会社も多いはず。
- Skype
- Chatwork
- Youtube
など、無料で便利に使える機能も、まだ使っていない会社が多いです。
建設業界の人材不足を受けて、建設機械の開発も進んでいます。
- AI施工ロボット
- ドローンによる測量
- BIM・CIM
などがもっと普及してくると、かなり仕事は楽になるでしょう。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
最終的には、施工はロボットが行い、人はそれを管理するだけになるかもしれません。
若者・女性・高齢者でも働ける業界になるかもですね(^^)
問題は、ITを導入できない会社もあること
ただし問題なのは、会社の資金力によってはIT化が難しいこと。
例えば、施工ロボットが便利だからといって、買える会社と買えない会社があります。
現段階では技術開発が進んでいるところですが、安く買えるまでにはまだ時間がかかるでしょう。
ちなみに、建設業界のIT化については下記の記事にまとめたので、興味あれば読んでみてください。
⑦年次有給休暇を5日間とらなければいけない
2019年4月から、どの会社も年間の有給休暇を5日以上を従業員に与えることが義務化されています。
労働基準監督署が管理しているので、有給休暇をとらないといけません。
ただし、現実は隠れて出勤している人もいるでしょう。
「5日も休まれちゃ回らない!」という意味で。
でも、バレるとさすがにマズイです。
制度と現場の乖離がある制度でもありますね。
⑧勤務間インターバル制度
「建設業働き方改革加速化プログラム」には載っていませんが、2019年4月からスタートしています。
勤務間インターバル制度とは、勤務と勤務の間を「最低でも○時間以上空けること」と決めるものです。
例えば12時間であれば、21時に仕事が終わったら、翌日は9時から仕事という意味。
建設業以外の大手企業では導入され始めてますが、建設業では難しそうですね。
⑨月60時間超の残業代は50%アップ
2023年4月から中小企業でも、残業代は給与の金額に50%プラスされます。
現在は大企業が50%、中小企業が25%です。
「残業代を50%アップで払えるのか?」が焦点ですね。
結論、50%分の残業代も入れた金額で受注できれば、問題ないです。
ダンピングを防ぐことと一緒ですが、どうやって実現するのかは少々不透明です。
会社側の負担になることは間違いありません。
⑩同一賃金同一労働
正社員と非正規雇用者の賃金格差をなくす制度です。
大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月からスタートします。
簡単にいうと「同じ仕事してるのに、正社員と非正規の給料が違うのはおかしいから、一緒にしよう」という意味です。
具体的には、正社員の手当てなどがなくなるイメージ。
会社によっては、ボーナスもなくすようですね。
結論は、
- 正社員:待遇が下がる
- 非正規雇用者:待遇が上がる
ということです。
同一賃金同一労働は義務なので、必ずなります。
非正規の人にとっては、働き方改革になりそうです。
【結論】建設業も働き方改革をしないと、どんどん苦しくなる
建設業の働き方改革ができるかどうか見てきましたが、長い目で見ると働き方改革はしないとマズいでしょうね。
若い人が入ってこなくなるから。
特に今の若者の傾向は、「仕事とプライベートのバランス」が重視されています。
仕事のやる気はあるんです。
でも、プライベートはきちんと取りたい若者が多い。
そうなると、今の建設業界は若者に選ばれにくいでしょう。
ググればすぐにわかります。
正直、ちょっと不人気業界であることがわかります。
でも建設業界の人手不足は深刻ですし、高齢化も進んでいます。
外国人労働者の受け入れも始まっていますが、まだまだ日本人技術者が必要なのも事実。
- 週休2日
- 残業時間の上限
- 社会保険加入
- 給与の充実
がないと、人手不足が加速してしまいます。
IT化も進んでいけば、若手にとって「建設業かっこいい」と見える日が来るかもしれません。
このままズルズルと現状を続けてしまうと、いつか取り返しのつかないことになるかも…
変革に痛みはつきものですが、建設業界全体で変わらなければいけないときかもしれません。
建設業界の働き方改革の法整備「新・担い手三法」
令和2年から、新・担い手三法が施行されます。
建設業界の働き方改革の法整備が進む感じです。
新・担い手三法の詳細は、
新担い手三法について改正点をわかりやすく解説にまとめたので、読んでみてください(^^)
まとめ【建設業の働き方改革は、条件がそろわないといけない】
この記事をまとめます。
- 建設業の働き方改革は、確実に進んでいる
- 実現には、条件がそろわないと厳しいかも
- 週休2日はハードル高め
- ダンピングの防止と、発注者への理解がカギを握るかも
- 働き方改革をしないと、人手不足が深刻になる
少しでもあなたの参考になればうれしいです(^^)
ちなみに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後も、建設業界の仕事は豊富です。
工事費の高騰を避けるため、東京五輪後の工事が増えているからです。
なので、しばらく落ち着くことはなさそうです。
2020年東京五輪後の建設業界については、
東京オリンピック後の建設業界の動向にまとめたので、興味あれば読んでみてください(^^)