
普通の業界とはちょっと違うもん。
建設業界でも働き方改革できるのかなぁ?
こういった疑問に答える記事です。
この記事の内容は下記のとおり。
- 建設業界で働き方改革が必要な3つの理由
- 国土交通省が掲げる建設業の働き方改革の内容
- 建設業界の働き方改革の事例
- 働き方改革が進む会社に転職するコツ
- 建設業で働き方改革は無理なのか?
私たち「ワット・コンサルティング」は、施工管理の技術者派遣の会社です。
「SAN-SUKE」という転職サポートもしており、働き方改革に積極的な企業も紹介しています。
結論、建設業も国土交通省や大手ゼネコンが主導で働き方改革を進めています。
「建設業界はきつい」と言われることもありますが、今後はもっと働きやすくなってくるかもしれません。
この記事では、今後の建設業界の働き方改革を解説します。
働き方改革に積極的な企業に転職するコツもまとめたので、あなたの未来の働き方の参考にしてみてください!
目次
- 1 建設業で働き方改革が必要な3つの理由
- 2 【2024年目標】国土交通省が掲げる建設業界の働き方改革
- 3 建設業界の働き方改革の事例【生産性向上の事例もあり】
- 4 働き方改革が進む建設会社に転職するコツ【ホームページをチェック】
- 5 働き方改革は建設業では無理なのか?【課題は多いがやらないとマズい】
- 6 まとめ【今後も建設業の働き方改革に期待しよう】
建設業で働き方改革が必要な3つの理由
そもそも、建設業界に働き方改革が必要な理由は下記の3つです。
- 人手不足
- 少子高齢化
- 女性の採用が少ない
1つずつ解説しますね。
※働き方改革が進められている背景として知っておきましょう。
人材不足【建設業界は2025年に47万人以上が不足】
国土交通省が発表した「建設産業の現状と課題」によると、2025年には47万~93万人の建設人材が不足するそうです。
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」
人材不足になる理由は、入職者が少ないから。
建設業界の入職者数は、平成9年をピークに減少傾向です。
出典:国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」
入職者が少ない理由は下記のとおりです。
- 残業が多い
- 休みが少ない
- 社会保険がない会社がある
- IT化が遅れている
- 3Kのイメージがある(きつい・汚い・危険)
これらのイメージを払拭するために、国土交通省が主体となって働き方改革が進められています。
※働き方改革の詳細は、【2024年目標】国土交通省が掲げる建設業界の働き方改革で後述します。
少子高齢化
若い人材が入職してこないことで、少子高齢化が進んでいます。
出典:国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状」
若者は建設業界のイメージが悪いため、なかなか人材を採用できていない現実があります。
このイメージを払拭するためにも、働き方改革が進んでいます。
参考:【悲報】建設業の若者離れが進んでます【打開策は働き方改革とICT】
女性の採用が少ない
国土交通省の調査によると、建設業界の女性技術者は少ないとわかります。
出典:国土交通省「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」
技術者・技能者は10%を切っている状態です。
女性の技術者が少ない理由は下記のとおり。
- 建設業界は男性のイメージが強いから
- 力仕事をするイメージがあるから
- 家庭と両立しにくそうだから
こうしたイメージを払拭するためにも、働き方改革が求められています。
具体的には、建設業界のIT化を進めることで、女性が活躍できる業務を増やすイメージです。
※IT化の詳細は、⑥IT化を促進する建設業者を支援【生産性の向上】で後述します。
他の業界では女性の雇用が進む中、建設業界は女性の雇用が遅れているため、変革が急がれています。
【2024年目標】国土交通省が掲げる建設業界の働き方改革
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
国土交通省では「建設業働き方改革加速化プログラム」を作成して、働き方改革を進めています。
具体的な働き方改革は下記の10個です。
- 36協定で残業時間の上限を設ける
- 週休2日制の実施
- 発注者に適正な工期設定の理解を求める
- 建設キャリアアップシステムで適正な評価と給料を実現
- 社会保険未加入業者へのペナルティ
- IT化を促進する企業を支援
- 年次有給休暇を5日間とらなければいけない
- 勤務間インターバル制度
- 月60時間超の残業代は50%アップ
- 同一賃金同一労働
2024年が1つの目標点となっています。
1つずつ解説しますね。
①36協定で残業時間の規制を設ける【罰則あり】
建設業界にも36協定が適用されて、残業時間の上限が設定されます。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
残業時間の上限は下記のとおり。
- 1ヶ月:45時間
- 1年間:360時間
ただし、特別な事情があれば年間720時間まで延長できます。
決められた残業時間を超過してしまうと、事業者や残業を命じた上司が罰則の対象になります。
罰則の内容は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。
36協定の実施は2024年から。
それまでは、各社の自主的な取り組みとなっています。
一般社団法人日本建設業連合会では、2024年の完全義務化までの残業上限の目安を発表しています。
2024年4月までは、残業時間の上限に猶予があるイメージですね。
開始時期 | 年間の残業時間 |
2019年4月 | 年間960時間以内 |
2022年4月 | 年間840時間以内 |
2024年4月 | 年間720時間以内(完全義務化) |
参考:一般社団法人日本建設業連合会「時間外労働の適正化に向けた自主規制の試行について」
建設業界が時間外労働の上限規制を作る理由【他業界と比較すると残業が多いから】
36協定を適用して残業時間の上限を作る理由の1つが、「他業界と比較したときの残業の多さ」です。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
これだと、入職者が減るのもうなづけますよね。
若い人材の入職を増やすためにも、残業時間の削減が重要です。
36協定で残業時間は短くなるのか?【発注者の理解とIT化がカギ】
36協定の適用で残業時間を短くするカギは、後述する下記の2つがポイントになるでしょう。
- 発注者の理解
- IT化
発注者が余裕のある工期に納得してくれて、業務効率を上げるIT化が進めば実現の可能性があります。
建設業界の36協定については、36協定が建設業でも適用される【現場に浸透できそうな3つの理由】に詳しくまとめています。
②週休2日制の実施【4週8休は2024年が目標】
建設業界では、まだ週休1日の会社もあります。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
これだと入職者が増えないばかりか、離職者も増えてしまうので、週休2日への移行が急がれています。
国土交通省では、2024年に週休2日制を実施する予定です。
現段階で、週休2日は徐々に広がりつつあります。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
週休2日制を導入するのにかかった経費に、補正係数を掛けて申告できるようになっているので、企業側も週休2日にするメリットが増えています。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
建設業者が週休2日を導入する場合の課題
まず、工事日数が減ってしまいます。
今よりさらに工期がタイトになるリスクがありますよね。
解決策は、最初から発注者に週休2日のスケジュールで理解してもらうしかありません。
※発注者への理解については、③発注者に適正な工期設定の理解を求めるで後述します。
また、日雇い労働者は稼働日が減って、収入が減ってしまいます。
この解決は、日当で働く人たちの社員化案があげられています。
日本建設業連合会では、社員化までの賃金補填も検討しているそうです。
ちなみに、公共工事では労務単価が上がっているため、収入が減らないように対策が進んでいるといえるでしょう。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
また、業界全体でダンピング(安値で受けて無理な工事)を防止する施策も実施するようです。
建設業界の週休2日制については、建設業の週休2日は2021年度末までに実施予定【でも問題は多い】で詳しく解説しています。
③発注者に適正な工期設定の理解を求める
国土交通省では「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定して、発注者側に働きかける仕組みを作っています。
また、適正な工期設定がわかるように「工期設定支援システム」を作り、各自治体に周知を進めています。
地域発注者協議会などでも、理解を求める活動をしていくそうです。
ダンピングを廃止できれば、実現可能だと思われます。
「工期はこういうものです。これ以上は短くできません」と業界全体で決めてしまう感じ。
正直、発注者がOKをくれれば36協定も週休2日も実現できる可能性があります。
発注者の責務も定めた「新・担い手三法」
発注者に適正な工期を求めるためにも、国では法整備を進めています。
令和6年には新・担い手三法が改正されて、公共工事の発注者の基本的な責務も明確化されていく予定です。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
新・担い手三法の詳細は、新担い手三法について改正点をわかりやすく解説にまとめています。
④建設キャリアアップシステムで適正な評価と給料を実現
建設キャリアアップシステムとは、建設技術者統一の評価制度を設けることです。
従来のような社内の評価だけでなく、業界全体で通用する評価制度ですね。
下記などがデータ化されるので、より給料が高い会社への転職するときの客観的データになります。
- 今までの現場経験
- もってるスキル
- もってる資格
また、適正な評価を受け、適正な給料をもらうデータになるでしょう。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
建設キャリアアップシステムは徐々に登録者数が増えています。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
2023年に330万人の登録を目標にしているようです。
⑤社会保険未加入業者へのペナルティ
建設業界は、他業界と比べると社会保険の加入率が低いです。
これでは、若い人材がますます建設業界に入ってきません。
なので、社会保険未加入業者は、建設業の許可・更新が認められなくなりました。
出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」
ただし、少し問題もあります。
社会保険未加入は零細企業がほとんど。
社会保険を払える資金がないため、加入していない現状があります。
加入しなければいけないのはわかっていても、加入すると破綻してしまう企業もあります。
廃業する会社が増えれば、働き手も減るでしょう。
零細企業や従業員さんたちをどうフォローするかも、重要なポイントです。
⑥IT化を促進する建設業者を支援【生産性の向上】
建設業界は、特にIT化が遅れています。
建設業界の人材不足を受けて、建設機械の開発も進んでいます。
- AI施工ロボット
- ドローンによる測量
- BIM・CIM
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
最終的には、施工はロボットが行い、人はそれを管理するだけになるかもしれません。
若者・女性・高齢者でも働ける業界になるかもですね。
問題はITを導入できない中小企業もあること
問題なのは、資金力がない中小企業はIT化が難しいこと。
例えば、施工ロボットが便利だからといって、買える会社と買えない会社があります。
ただ、建設業界はIT化が遅れていることもあり、「どの施工や業務に、どんなIT機器が使えるのか?」がそもそも認識されていない面もあります。
国土交通省では中小企業にもIT化を進めてもらうために、施工規模や内容に応じたIT機器の使い分けを明確にして、コストと生産性の両立を推進していくそうです。
出典:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」
ちなみに、建設業界のIT化については、ICTが建設業界で進んでます【機械の事例やメリットと課題も解説】に詳しくまとめています。
⑦年次有給休暇を5日間とらなければいけない
2019年4月から、どの会社も年間の有給休暇を5日以上を従業員に与えることが義務化されています。
労働基準監督署が管理しているので、有給休暇をとらないといけません。
建設業界の働き方改革の事例【生産性向上の事例もあり】で後述しますが、近年は有給休暇を取得できる建設会社が増えています。
今後はもっと普及していくでしょう。
⑧勤務間インターバル制度
「建設業働き方改革加速化プログラム」には載っていませんが、2019年4月からスタートしています。
勤務間インターバル制度とは、勤務と勤務の間を「最低でも○時間以上空けること」と決めるものです。
例えば12時間であれば、21時に仕事が終わったら、翌日は9時から仕事という意味。
建設業以外の大手企業では導入され始めてますが、建設業では難しそうですね。
⑨月60時間超の残業代は50%アップ
2023年4月から中小企業でも、残業代は給与の金額に50%プラスされます。
現在は大企業が50%、中小企業が25%ですが、中小企業も残業代が50%になります。
「残業代を50%アップで払えるのか?」が焦点ですね。
結論、50%分の残業代も入れた金額で受注できれば、問題ないです。
ダンピングを防ぐことと一緒ですが、どうやって実現するかが課題です。
⑩同一賃金同一労働
正社員と非正規雇用者の賃金格差をなくす制度です。
大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月からスタートします。
簡単にいうと「同じ仕事してるのに、正社員と非正規の給料が違うのはおかしいから、一緒にしよう」という意味です。
具体的には、正社員の手当てなどがなくなるイメージ。
会社によっては、ボーナスもなくすようですね。
結論は下記のとおり。
- 正社員:待遇が下がる
- 非正規雇用者:待遇が上がる
同一賃金同一労働は義務なので、必ずなります。
非正規の人にとっては、働き方改革になりそうです。
建設業界の働き方改革の事例【生産性向上の事例もあり】
建設業界の働き方改革の事例を紹介します。
積極的に働き方改革を進めている企業が増えています。
会社名 | 具体的な取り組み |
鹿島建設中部支店 |
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広成建設 |
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矢作建設 |
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平和建設 |
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名工建設 |
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成友興業 |
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菅原設備 |
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第一ヒューテック |
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ITツールの導入を進める会社が多いこともわかりますね。
生産性向上のために、ITツールを積極的に導入する建設会社も増えています。
働き方改革が進む建設会社に転職するコツ【ホームページをチェック】

前述のとおり、働き方改革に積極的な会社があるのは事実。
なので、労働環境を大事にしたいなら、働き方改革に積極的な会社に転職しましょう。
働き方改革に積極的な会社を探すコツは、下記の3つです。
- ホームページに「働き方改革」の記載がある
- 新聞・雑誌・ネットで働き方改革のインタビューを受けている
- 求人情報で働き方改革をアピールしている
建設業界でホームページに力を入れてる会社は、良い人材を獲得したい証拠。
「働き方改革」の記載があれば、覚悟をもって働き方改革を進めている可能性が高いです。
また、新聞・雑誌・ネットで第三者からインタビューを受けている場合も、ある程度の信ぴょう性があります。
求人を探すときの参考にしてみてください。
【ちなみに】ワット・コンサルティングでも働き方改革に積極的な企業を紹介してます
冒頭でもふれましたが、私たち「ワット・コンサルティング」では「SAN-SUKE」という転職サポートを行なっています。
働き方改革に積極的な企業を紹介しているので、転職して働き方を見直したい人は情報収集に活用してください。
無料で転職相談だけすることも可能ですし、「まだ転職するかわからない…」という人は求人情報を収集するだけでも利用できます。
※ムリに転職を勧めることはないので安心してください。
今後の働き方の参考にどうぞ。
働き方改革は建設業では無理なのか?【課題は多いがやらないとマズい】
建設業の働き方改革ができるかどうか見てきましたが、長い目で見ると働き方改革はしないとマズいでしょうね。
前述のとおり、若い人が入ってこなくなるから。
特に今の若者の傾向は、「仕事とプライベートのバランス」が重視されています。
若い人も、仕事のやる気はあるんです。
でも、プライベートはきちんと取りたい若者が多い感じ。
外国人労働者の受け入れも始まっていますが、まだまだ日本人技術者が必要なのも事実。
お伝えしてきたとおり、下記を実現しないと人手不足が加速してしまいます。
- 週休2日
- 残業時間の上限規制
- 社会保険加入
- 給与の充実
IT化も進んでいけば、若手にとって「建設業かっこいい」と見える日が来るかもしれません。
このままズルズルと現状を続けてしまうと、いつか取り返しのつかないことになるかも…
前述のとおり、働き方改革を進めている建設会社があるのも事実。
変革に痛みはつきものですが、建設業界全体で変わらなければいけないときかもしれません。
まとめ【今後も建設業の働き方改革に期待しよう】
この記事をまとめます。
- 国土交通省が主体になって建設業界の働き方改革を進めている
- 建設業の働き方改革は確実に進んでいる
- ダンピングの防止と発注者への理解がカギを握る
- 働き方改革を進めている企業が増えている
- 働き方改革をしないと人手不足が深刻になる
結論、建設業界の働き方改革は確実に進んでいます。
今後の動向に期待していきましょう。
くりかえしですが、私たち「ワット・コンサルティング」では「SAN-SUKE」という転職サポートを行なっています。
働き方改革に積極的な企業を紹介しているので、働き方を見直したい人は情報収集にどうぞ。
あなたの参考になればうれしいです!