一級建築士の合格率や受験資格、過去問、出身大学、試験内容などからみる難易度をご紹介します。
一級建築士は建設業界の資格の中で最難関資格といっていいでしょう。
設計職の中でも花形の資格で、二級建築士や木造建築士に比べると可能な業務範囲が一気に広がります。
建設業界で働くうえで取得したい資格ですよね。
この記事では、
- 一級建築士の合格率からみる試験の難易度
- 受験資格からみる難易度
- 過去問からみる難易度
- 出身大学からみる難易度
- 試験内容からみる難易度
- 一級建築士の勉強時間や勉強方法
- 他の資格との難易度比較
などをご紹介します。
あなたの一級建築士合格の参考になればうれしいです(^^)
それではさっそく見ていきましょう!
目次
一級建築士の合格率からみる試験の難易度
一級建築士の合格率からみる試験の難易度をご紹介します。
一級建築士試験は学科と製図に分かれています。
学科試験を合格した人のみ製図試験を受験できます。
近年の学科、製図、全体の合格率を見てみましょう。
一級建築士 | 学科合格率 | 製図合格率 | 全体の合格率 |
平成26年 | 18.3% | 40.4% | 12.6% |
平成27年 | 18.6% | 40.5% | 12.4% |
平成28年 | 16.1% | 42.4% | 12% |
平成29年 | 18.4% | 37.7% | 10.8% |
平成30年 | 18.3% | 41.4% | 12.5% |
令和元年 | 22.8% | 35.2% | 12% |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士試験結果」
一級建築士試験は毎年約25000名が受験していますが、学科と製図を合わせた全体の合格率は例年10~12%台というところです。
10人に1人くらいしか合格できない難関試験です。
一級建築士の学科試験の合格点
一級建築士の学科試験の合格点は毎年変動します。
125点満点中、何点以上正答かで合否が決まります。
近年の学科試験の合格点を見てみましょう。
年度 | 合格点 |
平成28年 | 90点 |
平成29年 | 87点 |
平成30年 | 91点 |
令和元年 | 97点 |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士過去3年分の試験問題等」
例年、125点満点中90点前後の正答が求められます。
正答率でいうと約72%くらい必要です。
一級建築士と二級建築士・木造建築士の合格率を比較してみた
二級建築士・木造建築士の合格率と比較してみましょう。
まずは二級建築士の合格率です。
二級建築士 | 学科合格率 | 製図合格率 | 全体の合格率 |
平成26年 | 37.9% | 55.3% | 24.3% |
平成27年 | 30.1% | 54% | 21.5% |
平成28年 | 42.3% | 53.1% | 25.4% |
平成29年 | 36.6% | 53.2% | 24.3% |
平成30年 | 37.7% | 54.9% | 25.5% |
続いて木造建築士の合格率です。
木造建築士 | 学科合格率 | 製図合格率 | 全体の合格率 |
平成26年 | 52.6% | 71.9% | 40% |
平成27年 | 54.7% | 50.5% | 27.3% |
平成28年 | 61.4% | 56.4% | 35.5% |
平成29年 | 48.1% | 76% | 40.1% |
平成30年 | 57.4% | 64.9% | 35.8% |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「二級建築士試験結果」「木造建築士試験結果」
二級建築士や木造建築士と比較しても、一級建築士の合格率の低さがわかりますね。
また、二級建築士や木造建築士の学科試験と製図試験の合格率の差に対して、一級建築士の学科試験と製図試験の合格率には大きな差があります。
一級建築士の製図試験の合格率は40%台なのに対して、学科試験の合格率は18%くらいと低いです。
「一級建築士の学科試験は相当難しいのか…?」というと、実はそんなことはありません。
実は二級建築士や木造建築士は設計職の入り口のような資格のため、けっこう合格を目指してがんばって勉強して試験に臨む人が多いです。
しかし、一級建築士を受ける人の中には記念受験の人や、会社から言われて嫌々受験する人もいます。
受験申込をしたのに試験会場に来ない人、退席可能時間になったらすぐに退席する人もいます。
つまり、二級建築士や木造建築士に比べると一級建築士を受験する人の本気度にはバラつきがあるのです。
だから、一級建築士の合格率は異常に低くなるという現象がおきます。
一級建築士の学科試験は半年~1年間しっかり勉強すれば誰でも合格できます。
独学でも合格できる難易度のため、本気で受験すれば十分合格できる試験といえます。
ちなみに、製図試験の合格率が高い理由は、問題が試験の約3ヶ月前に公表されるからです。
近年の製図試験の問題は、
- 平成26年:温浴施設のある「道の駅」
- 平成27年:市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅(基礎免震構造を採用した建築物である。)
- 平成28年:子ども・子育て支援センター(保育所、児童館・子育て支援施設)
- 平成29年:小規模なリゾートホテル
- 平成30年:健康づくりのためのスポーツ施設
でした。
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士試験結果」
ただし、以前の製図試験は製図すれば良いだけでしたが、今の試験はコンセプト・構造・設備・バリアフリー法などの知識も必要です。
製図試験もきちんと対策しないと合格できませんし、製図試験は独学での合格は難しく、日建学院や総合資格学院などの学校に通って勉強するのがおすすめです。
一級建築士は1回で合格しない人も多い
きちんと勉強すれば合格できる一級建築士ですが、1回目で合格できる人は少ないです。
理由は、一級建築士を受験する人のほとんどが仕事をしながら勉強しているからです。
仕事が忙しくて勉強時間をとれなければ不合格になる確率は高くなります。
ですが、一級建築士はあきらめずに勉強を続けていけば合格できるため、1回目の受験で不合格でもあきらめずにリトライしてください。
試験は年に1回しかないためチャンスは少ないですが、不合格だった場合は1年間みっちり勉強できると気持ちを切り替えて翌年の試験に臨みましょう。
学科試験に合格できれば翌年と翌々年は学科試験が免除されます。
一級建築士に合格する人たちの年齢層も見てみましょう。
年齢 | 学科合格割合 | 製図合格割合 |
24~26才 | 26% | 20.9% |
27~29才 | 20.1% | 25.4% |
30~34才 | 22.3% | 25.2% |
35~39才 | 13.9% | 14.4% |
40才以上 | 17.7% | 14.1% |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士試験結果」
30代前半までの受験者だけで全体の約7割をしめています。
つまり、受験する人の多くは若い人であり「初めて一級建築士を受験する」という人も多いです。
あきらめずに何度もトライしていれば初回受験者よりは有利ですから得点上位に食い込むことができ、合格できるというわけです。
今後の一級建築士の合格率は上がる?下がる?
今後の一級建築士の合格率は上がるのでしょうか?下がるのでしょうか?
もちろん未来を予測できるわけではないので確かなことはいえませんが、現在の建設業界は人材不足です。
建設業界の就労者は年々減少傾向にあり、高齢化も進んでいるためさらに人材が不足する可能性があります。
国土交通省の「建設産業の現状と課題」によると、建設業界の約3割は55歳以上で、29歳以下は約1割しかいません。
2025年には47万人~93万人の建設技能労働者が不足すると試算しています。
一級建築士にも同じことがいえます。
一級建築士の約65%は50歳以上です。
ベテランの建築士が引退してしまうと、国内の建築士の数は一気に不足してしまいます。
30代以下の一級建築士は10%台しかいません。
建築士の高齢化が進み、将来建築士が大幅に不足することは目に見えています。
2005年に社会問題になった「耐震偽装問題」をきっかけに、2008年の建築士法改正で建築士の受験資格が難しくなりました。
一級建築士試験の受験者数はここ10年で約40%減っており、建築士の高齢化・建築士不足になっています。
また、一級建築士の求人は多く出ています。
明らかに一級建築士が足りないのです。
もしかすると今後は試験の合格率を上げて、一級建築士を増やす方向になる時代がくるかもしれませんね。
※未来を読むことはできないため、保証はできませんが。
参考:国土交通省「建設産業の現状と課題」
一級建築士の受験資格からみる難易度
一級建築士の受験資格からみる難易度をご紹介します。
まずは一級建築士の現行の受験資格を見てみましょう。
一級建築士の受験資格は最終学歴や保有資格、実務経験年数で変わります。
最終学歴・保有資格 | 実務経験年数 |
大学の指定科目を卒業 | 卒業後2年以上 |
3年制短大の指定科目を卒業 | 卒業後3年以上 |
2年制短大か高専の指定科目を卒業 | 卒業後4年以上 |
二級建築士 | 二級建築士として4年以上 |
建築設備士 | 建築設備士として4年以上 |
その他国交省が認める者 | 所定の年数以上 |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士受験資格」
指定科目を卒業後の実務経験か、二級建築士・建築設備士としての実務経験がないと受験できません。
一級建築士は誰でも受験できる資格ではないため、受験資格からみる難易度は高めといえます。
改正建築士法で一級建築士は実務経験なしで受験できるようになる
ちなみに、前述のとおり一級建築士が不足している問題を解決するために、平成30年12月8日の参議院本会議で建築士法が一部改正され、実務経験がなくても建築士試験を受験できることになりました。
一級建築士の新受験資格をご紹介します。
改正前の受験資格 | 改正後の受験資格 |
大学で指定科目を卒業して実務経験が2年以上 | 大学で指定科目を卒業年に受験できる。合格後、実務経験を2年以上積めば免許登録。 |
3年制短大で指定科目を卒業して実務経験が3年以上 | 短大で指定科目を卒業年に受験できる。合格後、実務経験を3年以上積めば免許登録。 |
2年制短大か高専で指定科目を卒業して実務経験が4年以上 | 短大か高専を指定科目を卒業年に受験できる。合格後、実務経験を4年以上積めば免許登録。 |
二級建築士として実務経験が4年以上 | すぐに受験可能。合格後、実務経験を4年以上積めば免許登録。 |
大学卒業後に一級建築士を取得するパターンは4つです。
- 大学卒業⇒試験合格⇒実務経験2年⇒免許登録
- 大学卒業⇒実務経験2年⇒試験合格⇒免許登録
- 大学卒業⇒実務経験1年⇒試験合格⇒実務経験1年⇒免許登録
- 大学卒業⇒大学院に在学中に試験合格⇒実務経験2年⇒免許登録
というパターンが考えられます。
③のパターンからわかるとおり、受験前に実務経験がある人は、その実務経験も免許登録に必要な実務経験年数に含むことができます。
また、④のパターンのように大学院在学中に試験に合格することもできることになります。
一級建築士の受験資格改正については、
『改正建築士法の建築士試験の新受験資格!実務経験なしで受験できる?』を読んでみてください。
一級建築士の過去問からみる難易度
一級建築士試験の過去問を見てみましょう。
過去問を見て「わからない…!」という人は一生懸命勉強しましょう(^^)
学科試験の過去問
日本における伝統的な木ぞ建築物の屋根に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 組物は斗と肘木との組合せをいい、肘木が壁から外に二段に出ている組物は舟肘木と呼ばれている。
- 瓦葺きは、仏教の伝来とともに伝わり、各地で様々な試行が行われ、江戸時代において桟瓦葺きが考案されている。
- 垂木は、一般に、唐様(禅宗様)では放射状に配置され、和様では平行に配置されている。
- 桔木は、梃子の原理を利用して、長く突き出ている軒先を支えるために、軒裏から小屋組内に取り付けられる材をいう。
給水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 上水受水槽の保守点検スペースとして、水槽の上部に100cm、側面及び下部にそれぞれ60cmのスペースを確保した。
- 上水受水槽と別に設ける消火用水槽として、建築物の地下ピットを利用した。
- 屋外の散水栓において、逆流を防止するためにバキュームブレーカーを設けた。
- 断水時にも水が使用できるように、水道直結直圧方式の上水給水配管と井戸水配管とをバルブを介して接続した。
引用元:公益財団法人建築技術教育普及センター「平成30年一級建築士試験 問題集 学科Ⅰ(計画) 学科Ⅱ(環境・設備)」
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。
- 高架の工作物内に設ける店舗は、「建築物」である。
- 傾斜地等で敷地に高低差のある場合は、建築物の避難階が複数となることがある。
- 「遮炎性能」とは、通常の火災時における火炎を有効に遮るために外壁に必要とされる性能をいう。
- 建築材料の品質における「安全上、防火上又は衛生上重要である建築物の部分」には、主要構造部以外のバルコニーで防火上重要であるものとして国土交通大臣が定めるものが含まれる。
引用元:公益財団法人建築技術教育普及センター「平成30年一級建築士試験 問題集 学科Ⅲ(法規)」
土質及び地盤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 粘性土地盤において、土粒子の粒径は、粘土よりシルトのほうが大きい。
- 土の含水比(土粒子の質量に対する土中の水の質量の比)は、一般に、粘性土より砂質土のほうが大きい。
- 標準貫入試験のN値が10程度の地盤の場合、許容応力度は、一般に、砂質土地盤より粘性土地盤のほうが大きい。
- 砂質土地盤の許容応力度の算定に用いる支持力係数は、一般に、内部摩擦角が大きくなるほど大きくなる。
木工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 造作材に使用するJISによる「Nくぎ」の代用品として、「FNくぎ」を使用した。
- 現場における木材の含水率の測定に当たり、測定箇所については、1本の製材の異なる2面について、両小口から300mm以上離れた2箇所及び中央部1箇所とし、計6箇所とした。
- 構造用合板による大壁造の耐力壁において、山形プレートを用いて土台と柱とを接合する箇所については、山形プレート部分の構造用合板を切り欠き、その近傍の釘打ちについては増し打ちを行った。
- 軸組構法(壁構造系)において、基礎と土台とを緊結するアンカーボルトの埋込み位置の許容誤差を、±5mmとした。
引用元:公益財団法人建築技術教育普及センター「平成30年一級建築士試験 問題集 学科Ⅳ(構造) 学科Ⅴ(施工)」
学科試験は4択で「最も不適当なものはどれか」という問いが多いです。
明らかに違うものを消去法で削っていきましょう。
以前は過去問を繰り返しやれば合格できましたが、近年は過去問だけでは合格できません。
過去問中心の勉強方法だと基礎的なことや理論を理解できないことが多く、基礎的な理論がわからないと解けない問題に対応できません。
近年は過去問の使いまわしではなく新しい問題が増えています。
過去問だけでなく、教科書を勉強するのもお忘れなく。
もちろん、過去問をおろそかにしていいという意味ではありません。
過去問は過去5年分、できれば過去7年分を繰り返し解きましょう。
製図試験の過去問
製図試験の過去問は前述の通り、
- 温浴施設のある「道の駅」
- 市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅(基礎免震構造を採用した建築物である。)
- 子ども・子育て支援センター(保育所、児童館・子育て支援施設)
- 小規模なリゾートホテル
- 健康づくりのためのスポーツ施設
などの問題が学科試験の前日に公表されます。
設計条件などが決められており、実際に図面に手書きで製図します。
公益財団法人建築技術教育普及センターのホームページに過去3年分の製図試験の過去問が掲載されているので、イメージをつかむためにも見てみてください。
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士過去3年分の試験問題等」
一級建築士の出身大学からみる難易度
以前は「一級建築士の合格と大学は関係ない」といわれていました。
理由は、大学の指定科目を卒業しても実務経験が必要だったからです。
ですが、前述のとおり大学卒業年に一級建築士試験を受験できるようになるため、大学はある程度関係してくるでしょう。
※もちろん、試験合格後に実務経験を積まなければ一級建築士の免許はもらえませんが。
過去のデータですが、平成30年試験で一級建築士合格が多い大学ランキングTOP20を見てみましょう。
ランキング | 学校名 | 合格者数 |
1位 | 日本大学 | 209名 |
2位 | 東京理科大学 | 117名 |
3位 | 芝浦工業大学 | 100名 |
4位 | 早稲田大学 | 96名 |
5位 | 近畿大学 | 77名 |
6位 | 明治大学 | 75名 |
7位 | 神戸大学 | 70名 |
8位 | 千葉大学 | 66名 |
9位 | 工学院大学 | 58名 |
10位 | 東京都市大学 | 54名 |
11位 | 大阪工業大学 | 50名 |
12位 | 名城大学 | 49名 |
13位 | 京都大学 | 47名 |
14位 | 法政大学 | 46名 |
15位 | 九州大学 | 45名 |
16位 | 関西大学 | 42名 |
17位 | 名古屋工業大学 | 39名 |
18位 | 京都工芸繊維大学 | 38名 |
18位 | 東海大学 | 38名 |
20位 | 東北大学 | 37名 |
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士試験結果」
合格者数は大学の規模にも関係しています。
日本大学が圧倒的ですが、受験者が多い分合格者も多くなっています。
一級建築士は有名大学にいかなくても合格できます。
ただ、数字で見ると有名大学出身者の合格が多くなっています。
有名大学出身者はゼネコンに就職する人も多く、二級建築士よりは一級建築士が必要な人も多く受験者・合格者が多くなっています。
大手ゼネコンに就職する人は、二級建築士を受けずに一級建築士から受験する人も珍しくありません。
前述のとおり、今後は実務経験の前に受験することになるため、高校生は進学する大学の参考にしてください。
一級建築士の試験内容
一級建築士の試験内容をご紹介します。
まずおおまかな試験の流れですが、
- 4月ころ:願書申込
- 7月ころ:学科試験の前日に製図試験の問題発表
- 7月ころ:学科試験
- 9月ころ:学科試験の合格発表
- 10月ころ:製図試験
- 12月ころ:製図試験の合格発表
となります。
少々やっかいなのが、学科試験と学科試験の合格発表の間があることです。
明らかに不合格の場合は翌年の学科試験の勉強に取りかかれますが「合格か不合格か微妙」という場合は、合否がわからないまま10月の製図試験対策をしなければいけません。
学科試験では後で自己採点できるようにしておきましょう。
学科試験の前日に製図試験の問題が公表されるため、製図試験の対策は学科試験が終わったあとで大丈夫です。
学科試験までは製図試験のことは気にせず、学科試験の勉強だけに集中しましょう。
学科試験の出題科目と出題数
一級建築士の学科試験の出題科目と出題数をご紹介します。
- 学科Ⅰ(計画):20問
- 学科Ⅱ(環境・設備):20問
- 学科Ⅲ(法規):30問
- 学科Ⅳ(構造):30問
- 学科Ⅴ(施工):25問
となっています。
試験時間は、
- 学科Ⅰと学科Ⅱ:2時間
- 学科Ⅲ:1時間45分
- 学科Ⅳと学科Ⅴ:2時間45分
で、合計6時間半の試験です。
ちなみに、学科試験はマークシート方式です。
参考:公益財団法人建築技術教育普及センター「一級建築士 出題科目、出題数等」
願書申し込み方法・受験料・合格発表
願書の申し込み方法は、
- 郵送による申し込み
- インターネット申し込み
- 試験会場申し込み
の3つがありますが、インターネット申し込みがもっとも簡単です。
一級建築士試験の受験料は19700円です。
学科試験・製図試験の合格発表は公益財団法人建築技術教育普及センターのホームページ上で公表されます。
姉歯事件をきっかけに一級建築士試験の難易度が上がった?
一級建築士試験でよく話題に上がるのが「2005年の耐震偽装の姉歯事件をきっかけに一級建築士試験が難しくなったか?」です。
2005年の耐震偽装の姉歯事件があったことを受けて、2009年から一級建築士試験の内容が大きく変わっています。
旧試験 | 現行の試験 | |
科目数 | 4科目 | 5科目 |
学科の出題数 | 100問 | 125問 |
学科の選択肢 | 5択 | 4択 |
合格基準 | 60~67点くらい | 90点くらい |
合格に必要な正答率 | 60~67%くらい | 90%くらい |
出題範囲 | ー | バリアーフリー法などが追加 |
新旧試験の違いは上記のような感じです。
合格基準と合格に必要な正答率は上がっているため、たしかに試験の難易度は上がったのかもしれませんね。
でも出題数は、
- 旧試験:100問×5択=500
- 現行の試験:125問×4択=500
で変わっていません。
むしろ5択が4択に減ったことで正解する確率は上がっています。
まぁ今さら「旧試験の方が合格しやすかったか?」と議論してもしょうがないですし、一概に難易度が上がったとは言えない部分もあります。
勉強に集中しましょう。
一級建築士の仕事内容
一級建築士は建築物の設計、工事監理などの業務を行います。
一級建築士の主な就職先は、
- 設計事務所
- 建設会社・ゼネコン
- ハウスメーカー
- 公務員
などです。
また、設計事務所をつくって独立起業する人もいます。
ただし、独立起業は十分な顧客基盤がないと仕事がないので注意しましょう。
一級建築士にしかできない業務は、
- 延べ床面積300㎡以上の木造以外の建築物の設計
- 特定建築物の設計
です。
簡単に言うと、一級建築士はすべての建築物の設計をすることができる最上級資格です。
一級建築士は建築基準法を知っているだけでは務まりません。
法律を守ることはもちろん、依頼主の意向をくみ取って、依頼主の予測を上回る設計をしなければいけません。
言われたとおりに設計する能力は最低限必要ですが、さらに上をいく設計能力が必要です。
センスや柔軟な思考も必要な仕事でしょう。
建築基準法はどんどん変わっていくので、常に法律についていくことも必要です。
今後はアジア圏など海外で仕事をすることも視野にいれましょう。
グローバルに活躍できる建築士が今後は成功する時代です。
一級建築士の年収や給料
厚生労働省の賃金構造基本統計調査を元に計算すると、一級建築士の平均年収は642万円です。
月給とボーナスは、
- 平均月給:423,400円
- 平均ボーナス:1,345,200円
という内訳です。
勤務する企業の規模で給料は変わります。
企業規模 | 平均月給 | 平均ボーナス | 平均年収 |
10~99人 | 41万円 | 105万円 | 591万円 |
100~999人 | 42万円 | 135万円 | 640万円 |
1000人以上 | 48万円 | 222万円 | 800万円 |
1000人以上のゼネコン・スーパーゼネコンともなると平均年収800万円になります。
前述のとおり一級建築士が不足しているため、今後はさらに年収が上がるかもしれません。
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
一級建築士試験に合格するための勉強方法や勉強時間
一級建築士試験に合格するための勉強方法や勉強時間をご紹介します。
前述のとおり、一級建築士の学科試験は独学可能ですが、製図試験は学校に通わないと合格は難しいです。
もちろん学科試験の勉強で学校に通えるなら通っても良いと思います。
学校に通うメリットは「一級建築士合格のプロ講師に教えてもらうことで勉強時間を短縮して効率的に合格できること」だからです。
ただし注意点は、学校に通う時間がかかる場合は独学を検討しましょう。
学校に行く時間が片道1時間半であれば往復3時間ということです。
移動で3時間使うなら、自宅で3時間勉強する方がマシです。
製図試験の対策は学校に通うのが必須ですが、学科試験の勉強で学校に通うかどうかは、
- 費用
- 仕事をしながら受験する人は学校に行く時間があるか
- 自宅から学校への通学時間
などで総合的に判断してください。
一級建築士に合格するために必要な勉強時間
一級建築士に合格するために必要な勉強期間は6ヶ月~1年です。
6ヶ月~1年と幅が広いのは、1日のうち何時間を勉強できるかによって変わるからです。
例えば、平日2時間、休日5時間の勉強ができるようであれば勉強期間は約1年を想定しておきましょう。
平日3時間、休日8時間の勉強ができるようであれば勉強期間は約6ヶ月を想定しておきましょう。
一級建築士に合格するために必要な勉強時間は800~1000時間くらいと言われています。
※もちろん、本人の頭の良さや勉強の質にもよります。
仕事が忙しい人や、休日も予定が入りやすい人は余裕をもった勉強スケジュールを組みましょう。
勉強のコツ①疲れ切る前に休憩をとる
勉強は時間の長さよりも質が大切です。
集中していない状態で1時間勉強するよりも、集中して30分勉強する方がはるかに効率的です。
特に学科試験は暗記問題が多いため、集中力が低下した状態で勉強しても頭に入らなければ意味がありません。
質の良い勉強を長時間続けるコツは、勉強に疲れ切る前に休憩することです。
疲れ切ってから休憩すると復活するまでに3時間も4時間もかかります。
※経験ありませんか(^^)?
「もうちょっと勉強を続けられるかな」というところで休憩します。
そうすると短時間で復活できます。
だまされたと思ってやってみてください(^^)
上手な人は「30分勉強したら休憩」「45分勉強したら休憩」というように勉強する時間を区切っています。
30分や45分など時間がきたら音が出るタイマーを設定して、音がなったら強制的に15分休憩するなども有効です。
こまめに休憩する方が集中力が高い状態を長時間維持できます。
勉強のコツ②眠いときは15分寝る
どうしても眠い場合は15分睡眠がおすすめです。
ウトウトしながら勉強すると暗記できないので、寝たほうが良いです。
ただし、2時間や3時間寝てしまうと大切な勉強時間が大幅に削られてしまいます。
また、長時間の睡眠はかえって疲れてしまいます。
頭も寝ている状態なので、起きてから勉強できる状態になるまでにさらに時間がかかります。
15分睡眠は想像以上に頭がスッキリして、集中力を高めることができます。
勉強のコツ③電車通勤の人はアプリで勉強
電車通勤している人は通勤時間も勉強に有効に使いましょう。
立って電車に乗っている場合や満員電車だと、なかなか本を開いて勉強できないですよね。
今は一級建築士の勉強向けにアプリがあるため便利です。
無料アプリもあるため、まずは気軽にダウンロードしてみましょう。
アプリであれば片手で指一本で勉強できるので、電車通勤に向いています(^^)
独学で学科試験の勉強するなら教科書と過去問を両方勉強する
前述のとおり、近年の学科試験は過去問の勉強だけでは合格できません。
過去に出題されたことがないような新しい問題が多くなっているからです。
独学で勉強するなら過去問だけでなく、教科書で基礎を勉強しましょう。
教科書で基礎を勉強しておけば、過去問にない問題でも基礎知識から応用して問題を解くことができます。
教科書を勉強するときは知的探求心を大切にしましょう。
教科書に書いてある基礎から「こういう場合はどうなんだろう?」と興味・疑問を持つことが重要です。
興味・疑問をもったことは調べて知識を深めましょう。
過去問中心で勉強している人はこうした応用問題が解けないため、ライバルに差をつけることができます。
学科試験の勉強の流れは、
- まずは教科書を読む
- 過去問をくりかえす(過去5年~7年分)
- 過去問を解いていてわからないところは教科書に戻って再度勉強
- 教科書で興味・疑問をもったところを自分で調べながら勉強
- 試験が近づいたら過去問を繰り返して問題と答えを覚える
という感じです。
過去問はみんなが勉強することなので、過去問できちんと点数をかせげるようにしておくことも大切です。
一級建築士合格におすすめの学校
一級建築士合格におすすめの学校は、
- 日建学院
- 総合資格学院
です。
前述のとおり学科試験は独学でも合格できますが、製図試験は学校に行かないと合格できません。
製図試験の合格者のほとんどが日建学院と総合資格学院だと思って良いでしょう。
一級建築士試験合格のノウハウが多くたまっているため、合格するためのコツをわかりやすく教えてくれます。
もちろん費用がかかりますが、学科試験に合格したら製図試験で落ちたくないですよね。
費用に余裕がある人は学科試験対策も日建学院や総合資格学院を検討してください。
過去問から今年出題される問題の予測も素晴らしいです。
学校に通うメリットは、
- 独学より多くの費用がかかるため合格しないともったいない
- ライバルがいるため競争原理がはたらき点数が伸びる
の2つでしょう。
①も②も独学にはないメリットです。
独学よりもストレス・プレッシャーがかかりますが、合格率は高くなります。
一級建築士にどうしても合格したい人へ
これまで説明してきましたとおり、一級建築士試験はきちんと勉強すれば合格できる試験です。
ではなぜ、一級建築士に合格できない人がいるのでしょうか?
理由は簡単です、合格する前にあきらめたからです。
「仕事が忙しい」「勉強する時間がない」など、できない理由を言うのは簡単です。
ですが、本気で一級建築士に合格したい人は、
- 仕事が忙しいから、どうやって勉強時間を作るか?
- 勉強する時間がないから、どこか削れる時間はないか?
と「できる理由」を考えるものです。
ちょっと厳しい言い方ですが、できない理由がでてくる人は心のどこかで「一級建築士に合格しなくてもいいか…」と思っているのかもしれません。
場合によっては、一級建築士に合格するには一時的に何かを捨てなければいけないかもしれません。
飲みに行く回数を減らしたり、休日にゆっくり休む日を減らしたり、何かを捨てないと一級建築士資格は手に入らないかもしれませんよ。
最後まであきらめずに「合格するまで続けた人」が一級建築士に合格する人です。
勉強すれば合格できる資格なので、あきらめずに合格を目指しましょう(^^)
一級建築士と他の資格の難易度比較
一級建築士取得を考える人なら、他の資格も気になりますよね。
色々な資格と一級建築士試験の難易度を比較することで、受験する順番も考えたいですよね。
一級建築士と比較される資格の難易度比較をご紹介します。
一級建築士資格は国内のあらゆる資格の中でも難しい方で、建設系資格の中ではトップクラスの難易度です。
一級建築士と1級土木施工管理技士を比較すると一級建築士の方が難易度が高い
一級建築士と1級土木施工管理技士を比較すると、一級建築士の方が難易度が高いです。
理由は出題範囲です。
1級土木施工管理技士は土木のことが出題されますが、一級建築士は計画・環境・設備・法規・構造・施工と出題範囲が広いです。
より広い範囲の勉強が必要になる分、一級建築士の方が難易度が高いです。
難易度のイメージですが、1級土木施工管理技士と近い難易度は二級建築士です。
一級建築士はさらに難易度が高いです。
1級土木施工管理技士の難易度をくわしく知りたい場合は、
『1級土木施工管理技士の合格率や過去問から見る難易度』を読んでみてください(^^)
一級建築士と1級建築施工管理技士を比較すると一級建築士の方が難易度が高い
一級建築士と1級建築施工管理技士を比較すると、一級建築士の方が難易度が高いです。
一級建築士は製図試験があることと、1級建築施工管理技士よりも受験資格のハードルが高いです。
ちなみに、建設業界での評価も一級建築士の方が高いです。
「1級建築施工管理技士に合格した」というよりも「一級建築士に合格した」という方がすごい!と評価されます。
1級建築施工管理技士の難易度をくわしく知りたい場合は、
『1級建築施工管理技士の合格率や過去問や受験資格から見る難易度』を読んでみてください(^^)
一級建築士と第三種電気主任技術者(電検三種)を比較すると一級建築士の方が難易度が高い
一級建築士と第三種電気主任技術者(電検三種)を比較すると、一級建築士の方が難易度が高いです。
理由は受験資格です。
第三種電気主任技術者は合格率が低いですが、受験資格は「誰でも受験できる」です。
一級建築士の方が受験資格からみて難易度が高いといえるでしょう。
ちなみに、電気主任技術者の試験の難易度は、
電気主任技術者・電験試験の難易度や年収!三種二種一種のコツにまとめているので、興味あれば読んでみてください(^^)
一級建築士と技術士を比較すると一級建築士の方が難易度が高い
一級建築士と技術士を比較すると、一級建築士の方が難易度が高いです。
技術士の合格率は15%台、一級建築士の合格率は12%台なので、合格率からみて一級建築士の方が難易度が高いです。
ただし、前述のとおり一級建築士の受験資格が変わることで、単純に一級建築士の方が難易度が高いとは言えないようになるでしょう。
一級建築士と建築設備士を比較すると圧倒的に一級建築士の方が難易度が高い
一級建築士と建築設備士を比較すると、圧倒的に一級建築士の方が難易度が高いです。
建築設備士の合格率は50%台です。
一級建築士の合格率10%台とは大きな違いですね。
ちなみに、建築設備士の試験の難易度については、
建築設備士の受験資格や試験の難易度!独学でも合格できるのか?にまとめているので、興味あれば読んでみてください(^^)
まとめ
一級建築士は合格率が低く、受験資格のハードルも高く、難易度も高い試験です。
ですが、建設業界で上を目指すなら必ず取得しておきたい資格です。
一級建築士はきちんと勉強すれば合格できる資格です。
途中であきらめずに勉強すれば取得できる資格なので、合格するまでトライしましょう。
今後は受験資格が変わるため、合格しやすくなる可能性があります。
時代の流れに乗って一級建築士を取得しましょう。
あなたの一級建築士合格の参考になればうれしいです(^^)